ルーチェ
イタリア語で光、輝きなどを意味する。ちなみにマツダも、暗黒の世を光明に導いた神アウラ・マツダ(Ahura Mazda)と、松田社長の両方につながりがある。
初代のプロトタイプを63年秋の第10回全日本自動車ショーに参考出品したあと、市販型はそのクルマとは異なるスタイリングで1966年8月に販売を開始した。エンジンは1.5Lで直4のSOHC、リヤドライブ、4ドアセダンの形態だった。フロントシートはベンチタイプで定員は6名。これは当時のこのクラスのクルマにはない、大きなメリットだった。スタンダードとデラックスがあり、標準価格は59万5000円と69万5000円、AT車は8万円高。
スタイリングは、イタリアのカロッツェリア・ベルトーネに依頼し、それにマツダ社内のデザイナーが手を加えて完成したものだった。マツダがイタリアのカロッツェリアにスタイリングを依頼したのは、このクルマが初めて。
67年3月にリクライニング・シート仕様、5月にはツインキャブレーターを装備したSS発売。68年5月、SSに国産初のレザートップ仕様車設定。12月には、SOHCの1.8Lエンジンを載せた上級車を追加した。
69年10月、このクルマの歴史のうえでも、またマツダの技術史上においても画期的な新型がデビューした。ルーチェ・ロータリー・クーペである。2ドアのハードトップタイプで、13A型655cc×2ローターREを載せた、FF車だった。マツダとして初のハードトップ車であり、ロータリーエンジン初のFF車でもあった。しかし、ロータリークーペは72年9月までの生命だった。
72年11月、フルモデルチェンジ、2世代目に移行。ボディは4ドアセダンと2ドアハードトップ。エンジンは12A型573cc×2ローターのREだけ。ロータリー専用車となった。各種の公害対策を施したAPモデルも加わった。ボディサイズはホイールベースが10mm延びて2510㎜となった。全長/全幅/全高はハードトップが4320/1665/1380mm、セダンが4240/1660/1410mm。
73年4月、レシプロエンジンの1.8L車を追加。12月、13B型135psロータリー搭載のAPグランツーリスモを設tワゴン・タイプもできた。ルーチェの名では唯一のワゴン車だった。
74年11月、ロータリーエンジンのガスシールを改良、燃費の改善をはかった。ボディ関係の変更はなし。
77年10月、フルモデルチェンジ、3代目となった。角形縦4灯のヘッドランプがトレンドに合っており、レガート(イタリア語でなめらかにという意味の音楽用語)のサブネームが付いた。4ドアのセダンとハードトップ(ピラード)が選べた。ホイールベース2610mm、全長4575/4625mm、全幅1690mmとなり、大型化した。エンジンはレシプロが1.8Lと2L、REが12Aと13B(654cc×2ローター)型というラインアップ。3速AT車もあった。78年7月、レガートの名がなくなった。
79年10月のマイナーチェンジでは、ヘッドランプが大型の角2灯に変わって、イメージを一新。ラジエーターグリル、テール、インテリアのデザインも変更した。セダンにはレシプロの1.8Lと2Lエンジンが載り、ハードトップ車にはレシプロ2LとREの13B型エンジンを搭載した。
81年10月、フルモデルチェンジ。4世代目登場。ボディタイプはセダンと4ドアハードトップで旧型と同じ。エンジンはレシプロがガソリンの1.8Lと2L、ディーゼルの2.2L計3種。それにRE12A型があった。エクステリアでは、セダン、ハードトップ車ともにリヤクォーター・ウインドウのあることが新しかった。ロータリーエンジン搭載車は11月末の発売。82年10月、ロータリーターボを追加し、5番目のエンジンとなった。12A型に初めてターボを装着したもので、オリジナルの130psに対し160psを発生した。83年10月のマイナーチェンジでは、ロータリーエンジンの13B-S型を導入した。Sとはスーパーインジェクション付きのことで、出力は160ps。
86年9月、第5世代に移った。セダンと4ドアハードトップのバリエーションは変わらず、エンジンは新開発のV6・2Lを載せた。SOHC・3バルブで、自然吸気の110psとターボ版の145psが選べた。このほかレシプロでは直4の2Lがあり、REでは13B型ターボ仕様をそろえた。ATは電子制御で、ホールドスイッチが付いた。リヤサスペンションは、マルチリンクの独立に変わった。
87年8月、V6の3Lエンジン搭載車を設定した。SOHCで160psを発生する最高級グレード、ロイヤルクラシックというモデルだった。88年9月、V6をDOHC化した。同時にフロントグリル、ハードトップのテールランプなど外観上の一部分、内装もシート材料や形状、ステアリングホイールなどを変えた。
89年4月、4ドアハードトップ車の3000リミテッドに、インテリアの本革仕様と布仕様追加。10月と90年2月に特別限定車を発売。90年6月にGシリーズという特別装備車く本革仕様車)を追加したあと。91年5月のセンティア登場とともにその歴史を終えた。ただし、タクシー仕様などにルーチェという車名が残り、96年12月まで生産を続けた。
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