MELASとは? わかりやすく解説

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メラス

脳卒中症状主症状とする疾患で、母系遺伝(母から子どもへの遺伝)をとりますmtDNA転移(t)RNALeu(UUR)のコード領域にある3、243番目のA→G変異(3243変異)をとるものが80%、3271番目のT→C変異10%です。
本症は母系遺伝をとるので、母親同胞多く変異をもってます。しかし変異mtDNAをもっていても、無症状なものから、非特異的症状筋力低下易疲労性低身長糖尿病など)のみ、典型的メラス症状を示すものまでと幅があります病理学的に血管小動脈)の異常がある(血管平滑筋に異常ミトコンドリア増加している)ことから、血管系の異常が本症の発症大きく関与していると考えられています。
成人発症ありますが、多く小児期最初脳卒中似た症状出現します。患者さんの80%は15歳まで第1回目エピソード経験します。脳卒中症状出現する前から、低身長易疲労軽度筋力低下をみることが多いとされています。脳卒中症状嘔吐を伴う発作性頭痛痙攣意識障害で、回復後片麻痺視力障害多く一過性)を残します脳卒中症状数時間から数日続きその間は高乳酸血症による代謝性アシドーシスをみます。成人みられる脳卒中異なり麻痺のような症状一過性通常速やかに快復します。
発作症状繰り返すにつれ、知的退行てんかん半盲時に両側性)、筋力低下進行しるいそう感染腎不全などでをみることもあります
血清とくに髄液の乳酸値が正常の2倍以上と高くなります。脳CT/MRIでは多巣性の脳梗塞類似の所見後頭部優位に認めます(図32)。
図32:メラスの脳MRI(T1強調画像)後頭部写真左下の方で、矢尻印で囲んである部位)は薄くみえる(シグナル強度が低い)。この部は血流少なく脳梗塞の後の所見に似る。メラスではこのように後頭葉病変が強い傾向がある。

病気進行すると、本症のように脳室拡大脳の萎縮が目立つようになる
32:メラスの脳MRI(T1強調画像)
ただし、罹患部位は必ずしも大・中血管支配領域とは一致しないところが、成人脳梗塞異なるところです。筋生検では赤色ぼろ線維とともに、約80%に血管系の異常(コハク酸脱水素酵素染色濃染する血管strongly succinate dehydorgenase (SDH)-reactive blood vessels: SSV)(図33)をみます。ミトコンドリアDNA変異血液から分離したDNA検査できます
図33:筋組織内の異常血管(SSV)ミトコンドリアをよく染めコハク酸脱水素酵素(succinate dehydrogenase: SDH)

染色すると、正常筋(左:N)では血管はほとんど染まらない

メラス(右:MELAS)では血管壁強く染まり異常なミトコンドリア血管壁蓄積していることが分かる
33:筋組織内の異常血管(SSV)
治療には根本的なものはありません。発作時には輸液によるアシドーシス補正ステロイド投与酸素吸入行います。カルジオクロームの静注が有効であるとの報告あります。またジクロロ酢酸という化学物質乳酸アシドーシス改善し本症に有効とされています。

Melas

名前 メラス

MELAS

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/26 02:03 UTC 版)

ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群 (Mitochondrial myopathy, Encephalopathy, Lactic Acidosis, Stroke-like episodes)あるいは略してMELAS(メラス)は反復する脳卒中様発作を特徴とするミトコンドリア病の一種である(以下"MELAS"と呼ぶ)。MELASの80%がmtDNAの点突然変異(3243A→G変異)により引き起こされる。

症状

MELASの拡散強調画像。脳梗塞類似病変(白く見えるところ)を向かって左側に認める

MELASはミトコンドリアの障害でATP産生がうまくいかなくなるミトコンドリア病(ミトコンドリア脳筋症)の1種である。5~15歳で好発し、知能低下や感音性難聴、低身長、易疲労性、心筋症、筋力低下といったミトコンドリア病に共通する神経・筋症状のほかに、繰り返す脳卒中様発作頭痛嘔吐痙攣意識障害片麻痺など)が特徴的で、この発作時にCTMRI(拡散強調画像)をとると脳梗塞に類似した病変を認める(ただし、この病変の発症機序は不明)。

検査所見

MELASに伴う赤色ぼろ線維

ミトコンドリア病全般に共通することだが、ミトコンドリアでのATP産生(電子伝達系など)がうまくいかないことで解糖系が亢進し、血中・髄液中の乳酸濃度と乳酸/ピルビン酸比(L/P比)が上昇する。また、筋生検を行い、ゴモリ・トリクローム染色を行うと赤色ぼろ線維を認める。MELASに特徴的な所見としては、後頭部の脳梗塞類似病変や脳波での焦点周期性てんかん型放電がある。

遺伝

MELASの80%はミトコンドリアDNAの点変異(3243A→G)であり、母系遺伝する。

治療

現在、発症後の治療法は対症療法にとどまるが、2015年2月24日、英国議会上院が、ミトコンドリアDNAに異常のある女性の受精卵から核を取り出し、正常なミトコンドリアDNAを持つ女性の脱核した卵子に移植するという手法で、3人の遺伝子をもつ受精卵を誕生させ、MELASの子供への遺伝を防止する技術を承認した[1]。この治療法は、ミトコンドリア脳筋症の根治的治療法として期待される一方で、英国上院での審議では「デザイナーベビー」につながるとの倫理上の懸念から反対意見や慎重論が根強かった[1]

2013年に日本においてもコエンザイムQ10類似の薬剤の臨床試験が開始された[2]

川崎医科大学などの共同試験によって、アミノ酸の一種であるタウリンを大量に投与すれば発作を抑えられることがわかり、2019年1月、厚生労働省の部会でタウリンの薬の承認申請が了承された。

脚注

  1. ^ a b “世界初「親3人」体外受精、英議会が承認 来年にも誕生”. 朝日新聞. (2015年2月25日). http://www.asahi.com/articles/ASH2T2HBMH2TUHBI00B.html 2015年2月25日閲覧。 
  2. ^ “ミトコンドリア病MELAS(メラス)に対するEPI-743の臨床研究を開始”. 国立精神・神経医療研究センター. (2013年8月9日). http://www.ncnp.go.jp/press/press_release130809.html 2015年12月13日閲覧。 

外部リンク


MELAS

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 04:19 UTC 版)

脳梗塞」の記事における「MELAS」の解説

家族歴有する若年性糖尿病難聴などを特徴とするミトコンドリア脳筋症のひとつにMELAS(メラス)がある。MELASは血管壁ミトコンドリア機能不全による痙攣発作不全片麻痺半盲などの脳卒中発作繰り返す脳卒中発作後頭葉頭頂葉でしばしば認められ病変分布支配領域一致しないため脳卒中発作と言われる

※この「MELAS」の解説は、「脳梗塞」の解説の一部です。
「MELAS」を含む「脳梗塞」の記事については、「脳梗塞」の概要を参照ください。

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