ATS-S改良形 (ATS-Sx形)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 13:35 UTC 版)
「自動列車停止装置」の記事における「ATS-S改良形 (ATS-Sx形)」の解説
警報機能のみのS形に、全JRが即時停止機能を追加し、さらにJR東海以西の各社とJR貨物で時素式速度照査の機能を追加した方式。 即時停止機能は、確認ボタンを押して警報を解除しても、停止現示の絶対信号機直下の地上子を通過(信号冒進や誤出発)すると即座に非常ブレーキをかける機能である。車上時素式速度照査機能は、二対の地上子対通過時間を車上タイマーと比較して速度照査し、速度超過時には非常ブレーキをかける機能である。 ATS-S改良形はJR各社で呼び名が異なり受信機が異なるものもあるが、北海道旅客鉄道(JR北海道)と東日本旅客鉄道(JR東日本)はSN、東海旅客鉄道(JR東海)はST、西日本旅客鉄道(JR西日本)はSW (SW2) (車体表記はS)、四国旅客鉄道(JR四国)はSS(SS II)(一部車体表記はSS)、九州旅客鉄道(JR九州)はSK (車体表記はSK)、日本貨物鉄道(JR貨物)はSFと呼ばれている。SN形には即時停止機能のみが追加されているが、それ以外にはSNの即時停止機能に加え車上時素式速度照査機能(2つの地上子の間を0.5秒以内で車上子が通過すると非常ブレーキが作動する)が追加され、さらにST形には列車番号送出機能が追加されている。また、SW形ではST形から列車番号送出機能を省略して車上装置を設計し直したもので、このSW形がほぼそのままSK形、SS形となった。SF形は当初はSN型機能だったが後日、車上に時素速照ボードを追加してST形に対応した。またロング地上子と絶対信号機直下の即時停止地上子の変周周波数は130 kHzと123 kHzで共通で互換性があり、車上子の常時発振周波数はSNの105 kHzの他は103 kHzとしている。これは車上時素式速度照査機能を追加したための措置で、速度照査区間にSN形やS形の列車が乗り入れても、車上速度照査用の地上子の変周周波数にST・SW・SS・SK・SF形は反応するが、SNやS形は常時発振周波数帯域のため、反応しない。また、車上時素式速度照査機能は分岐器の速度制限にも対応できるようになっている。 車体表記は、JR北海道がSN(SとNがそれぞれ大文字が四角で囲んである)、JR東日本がSN、JR東海がST(東海管内はPに切り替わらない場合の絶対停止のみ使用)、JR西日本がS、JR四国がSSまたはS、JR九州がSK(JR北海道と同様の場合と1つに収まっている場合の2種類がある)、JR貨物がSFとなる。 JR東日本車のうち、JR東海および伊豆箱根鉄道に直通運転をする運用を持つ車両には、ST形と同等の車上時素式速度照査機能を持つATS(SN●と表記)を搭載している(JR東海がATS-PTを導入したため一旦不要となったが、伊豆箱根鉄道の速度照査が車上時素式に更新されたため再び必要になっている)。 JR東日本管内に直通運転をしている伊豆急行の車両にはSiの表記があるが、呼び名が異なるだけでSN形と同じものである。ただし、伊豆急行線内では地上装置として速度照査機構を設置しており、信号の現示速度を守っていればロング地上子による警報ベルは鳴動しないようになっている。また、ATS確認ボタンにはカバーを被せ使用禁止としている。 それと同様に、かつてJR西日本管内からの直通運転があり、現在でもキヤ141系などJR西日本所属の検査車両などが入線する富山地方鉄道の鉄道線では、JR西日本と同じくSW形を採用している。JR東海との関係が深い愛知環状鉄道線・伊勢鉄道伊勢線・東海交通事業城北線では、JR東海と同じST形を採用している。また、JR貨物との関係が深い水島臨海鉄道では、ATS-SFとほぼ同形(確認扱い運転がないタイプ)のATS-SMを採用している。JR線からの直通運転を行わない第三セクター鉄道でもS形からSx形に更新する事業者が増えている。 なお現状では、改良機能に対応した地上子(即時停止地上子・時素式速度照査地上子)は原則として、絶対信号機(場内・出発信号機)・線路終端部・分岐部・急曲線部のみに設置する拠点設置であり、閉塞信号機には設置されていない。ただし、例外として、JR東海の一部駅・あおなみ線の全駅の場内相当閉塞信号機には、即時停止地上子が設置されている。愛知環状鉄道線ではすべての閉塞信号機にも時素式速度照査地上子が設置され、すべての信号でロング地上子をなくしている。 絶対信号機直下にあるATS-Sn形の即時停止地上子 ATS-ST形の地上子 絶対信号機直下にあるATS-ST形の即時停止地上子 ATS-SW形の地上子 ATS-S/Sx形車上子・地上子の発信・共振周波数(単位:kHz)ATS-SATS-SxSnStSW/SS/SK/SF(新)車上子(発信周波数)常時発信周波数105 103 列車番号送出- - 360 - 地上子(共振周波数)停止現示130 129.3 即時停止- 123 車上時素式速度照査- - 108.5 進行現示103
※この「ATS-S改良形 (ATS-Sx形)」の解説は、「自動列車停止装置」の解説の一部です。
「ATS-S改良形 (ATS-Sx形)」を含む「自動列車停止装置」の記事については、「自動列車停止装置」の概要を参照ください。
- ATS-S改良形のページへのリンク