9×39mm SP-5, SP-6
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/11 00:58 UTC 版)
「VSS (狙撃銃)」の記事における「9×39mm SP-5, SP-6」の解説
VSSの最大の特徴は、使用する弾薬にある。VSSで使用される9x39mm弾は、ライフル弾でありながら銃口初速が音速を超えず、衝撃波が発生しないため、ソニックブームによる断続的な音波が生じない。この弾薬と消音器を組み合わせることによって驚異的な消音効果が発揮され、発砲音を少しうるさい電動エアガンを撃った程度の音量にまで抑えることに成功している。 銃声というものは、通常二種類の音で構成される。火薬の燃焼による炸裂音と、弾丸が音速を超える際のソニックブームである。多くの軍用ライフル弾は、弾丸を音速まで加速させることで貫通力、破壊力を生み出している。しかし、たとえ小さな弾丸といえども、物体が大気中で音速の壁を突破すれば強烈なソニックブームが発生する。このような弾丸では、サプレッサーを使用しても消えるのは火薬の炸裂音であって、ソニックブームによる音を完全に消すことは出来ない。 これまでは、最初から初速が音速を超えない.45ACPや.22LRといった拳銃弾か、音速を超える弾薬から装薬量を減らすなどして亜音速に変えたものを使うしかなかった。そこでソ連は、一定の威力を維持した亜音速弾を作るため、大口径の弾丸を従来型のライフルカートリッジで撃ち出すという方法を考案した。 9x39mm弾は、7.62x39mm弾をベースとしたほぼ円筒状の(実際にはボトルネックはほんの僅かに残されている)ケースに、全長はそのままに口径が9mmまで大型化、重量は二倍に増した弾頭を装着している。装薬量(とそこから生じる発砲時の運動エネルギー)はライフル弾に匹敵するが、弾頭重量が大幅に増加しており、銃口初速が音速を超えないように調節されている。 カタログ上の有効射程は400mとなっているものの、通常のライフル弾を使った狙撃以上にその弾道は遠方に行くほど落ち込む(弾道低落量の大きい)軌道を描くことになる。同時にその運動エネルギーが一定値まで維持できる間に限り、風などの影響を受けにくくなっている。また、弾頭が重い上に口径も大きいため、標的に命中すれば通常のライフル弾以上のダメージを与えられる。 こうして、「初速は遅いが射程内なら一定以上の威力を維持できる亜音速弾薬」が完成した。具体的な数値でいうと、銃口初速が290m/s、エネルギー値は516ft・lbfとなる。参考までに、5.45x39mm弾は初速が940m/sでエネルギー値は971ft・lbf、9x19mm弾は初速が350m/sでエネルギー値は394ft・lbfである。 また、弾頭や用途に応じて幾つかのバリエーションが存在している。 SP-5 - 通常のボール弾(被覆鋼弾)。弾頭前部がスチール、後部がレッド(鉛)で、これを銅のジャケットが完全に覆うフルメタルジャケット弾。 SP-6 - 徹甲弾(アーマーピアシング)。ホローポイントのように貫通したレッドの弾頭の中心にスチール削り出しの弾芯を差し込み、レッドの側だけを銅のジャケットで覆っている。レッドで弾頭重量を稼ぎ、頑丈なスチールが対象を貫通する。500mで6mmのスチール板を、200mなら2.8mmのチタニウムか三十層のケブラーを貫通することができるとされる。 PAB-9 - SP-6の廉価版。削り出しだったスチールをプレス製に変え、生産性を増したことで単位辺りのコストを低下させている。しかし、プレス加工の精度が低かったため、射撃時の精度にもバラつきが生じ、バレルの磨耗も早くなるなどの事態が発生したため、既に生産は中止されている。 現在はSP-5とSP-6を中心に、狙撃銃以外のカービンやサブマシンガンといった同型弾薬を使用する銃の種類を増やすことで需要を増やし、消費量と生産頻度を上げてコストを減らそうとしている。
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