20世紀からの変動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 09:30 UTC 版)
近年は黄砂の発生が増加傾向にあるとの報道が多い。地球温暖化や砂漠化の進行を考えるうえで、黄砂の発生頻度の変化は重要な視点のひとつとされているが、正確にその変化を捉えるためには長期的なデータが必要となる。おもなデータを以下に挙げる。 タクラマカン砂漠以西を除く発生地では、強風の発生頻度の増加および積雪面積の減少に伴って黄砂の発生頻度が増えている。 中国北西部では、1960年代から40年間は減少傾向で、特に1980年代から1990年代には大きく減少しているが、1970年代前後は各地で変化にばらつきがある。 中国華北地方では1990年代までは減少の一途をたどっていたものの、2000年代に入って増加している。 韓国では、過去約100年間のデータから、1930年代後半から1940年代前半にかけて、黄砂の発生頻度が1990年代後半以降と同程度かそれ以上であったこと、1940年代後半から1950年代ごろまでは減少傾向で、それ以降増加傾向であり、晩秋から早春にかけての発生頻度が増えている。 日本の気象庁の観測では、1967年の観測開始以降、2002年に黄砂観測の日数・延べ日数が共に最多を記録したが、年ごとの変化が大きいため長期的な変化傾向ははっきりと判明していない。 発生頻度の変化とは別に、激しい砂塵嵐や濃度の高い黄砂の増加が見られるとの研究もある。 黄砂の強さや頻度は数年から数十年単位で変動していることや、その変動は地域によって異なることが分かる。総じて、韓国では1950年代以降、中国では2000年代以降に増加傾向にあるといえる。 近年の数年 - 数十年単位での変動は、降水量、積雪面積・積雪期間、砂塵嵐を発生させる暴風の発生頻度、黄砂の飛来経路などの天候パターンの変化や、自然起因の気候変動による砂漠化や土地の乾燥化によるところが大きいとされる。ただし、砂漠化や乾燥化については人為的な関与も指摘されており、特に2007年の時点で国土面積の18%、約174万km2が砂漠と化している。中国の砂漠化の進行、その背景にある過剰な放牧や耕地拡大などの農業の問題、生活や経済の問題がその原因とされており、環境問題としてとらえられる場合もある。 中国政府や地方政府が農業政策を誤ったり、過放牧・過剰耕作を抑制できなかったことで土地の乾燥化に拍車をかけ、乾燥地域の拡大につながっているとの指摘もある。一方、黄砂の影響を受けている韓国や日本なども、木材や農産物(仮想水の輸入に伴い原産国の土地に負荷をかける)の輸入などを通して間接的に関わっているとの見方がある。 内モンゴル自治区などでは、過放牧や工業汚染によって乾燥化が進み、黄砂の新たな発生地になりつつあるといわれている。カザフスタンでは、アラル海の例を見ると分かるように、農業政策の失敗により地下水や湖水をくみ上げすぎるなどして、土地の乾燥化が進んだ。また、汚染された排水や廃棄物によって土壌が汚染され、植物が枯れて乾燥化を進めている例もある。 そのほかにも、地球温暖化により内陸部の降水量減少や気圧配置の変化が引き起こされ、それらが乾燥化や強風の増加をもたらして、黄砂の増加に関係しているとの考えもある。また、エルニーニョ現象と黄砂発生頻度の関連性も指摘されている。 ただし、黄砂や黄砂被害の変化と、その原因とされる自然環境の変化や人為的な要因については、まだ不明な点もある。また、黄砂とは別の問題である大気汚染などが、黄砂の悪影響を増大させている側面もある。
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