ダイバーシティ

ダイバーシティという考え方は、60年代の米国で公民権運動など人権問題への取り組みのなかで生まれました。「黒人と白人女性」に対する差別的な人事慣行(採用、業績評価など)を撤廃しようという動きが発端になりました。やがてマイノリティ(障害者、高齢者など)をすべて包括する考え方に変わり、企業社会の中に浸透していきました。現在は企業競争力の観点から重要性を増しています。
日本でも変化に強い組織づくりの考え方として注目を集め、マネジメント手法として採用する企業が増えています。ソニーは2005年7月にダイバーシティ・プロジェクト(DIVI@Sony)を発足、女性社員の「就業継続支援」や「一担当者からマネージャーや経営職へのキャリアアップをサポート」する活動などを推進しています。08年2月にはダイバーシティ開発部を新設し、取り組みを強化しています。このほか富士フイルムホールディングス、丸紅、野村證券、東京電力、帝人、日産自動車など、多くの大企業が積極的に取り入れています。
背景には社会の大きな構造変化があります。少子化により十分な労働力が確保できない状況に移行しつつあるなか、企業は女性や高齢者、外国人などの労働力を生かす必要に迫られています。またニートやシングル・ペアレントが増加するなど、家族観も様変わりしています。
多様な顧客ニーズに応えられないような企業は、経営が成り立ちにくい時代になってきました。多様なニーズに応えるには、多様な人材を育てることがカギになります。従来のように男性社員は幹部候補、女性社員は補助職と画一的に処遇するのではなく、それぞれの個性を最大限に引き出し、それらを経営に生かす知恵や工夫、戦略が重要になっています。
団塊の世代でチームを組織し、同世代向けの製品・サービス開発を行うといったマネジメント手法は、その一例といえるでしょう。同様の手法は外国人向けや女性向けの商品開発にも応用できます。「100年に一度」といわれる不況期には社員のさまざまな能力を引き出し、モチベーションを高いレベルで維持できるかどうかが、成長の分かれ目になります。
日本の企業には伝統的に職場の「和」や社員の「同質性」を大事にする文化があります。競争力の源泉である「現場力」を維持するためには重要な価値基準かもしれません。ただ、ともすれば「出る杭は打たれる」ではありませんが、一人ひとりの個性や可能性を切り捨ててしまうことになりかねません。ダイバーシティという考え方はもっと評価され、経営に取り入れられてよいでしょう。
(掲載日:2009/04/25)
Weblioに収録されているすべての辞書からダイバーシティを検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。

- ダイバーシティのページへのリンク