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黄心樹

読み方:オガタマノキ(ogatamanoki)

モクレン科常緑高木

学名 Michelia compressa


黄心樹

読み方:オガタマ(ogatama)

モクレン科常緑高木春にコブシの花に似たかおりのある白い小さい花が開く

季節

分類 植物


オガタマノキ

(黄心樹 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/12 00:58 UTC 版)

オガタマノキ
1. オガタマノキ(伊勢市矢持町)
伊勢市指定天然記念物・樹高 19 m
保全状況評価[1]
DATA DEFICIENT
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : モクレン類 Magnoliids
: モクレン目 Magnoliales
: モクレン科 Magnoliaceae
: モクレン属 Magnolia
: オガタマノキ節 Magnolia sect. Michelia[2]
: オガタマノキ M. compressa
学名
Magnolia compressa Maxim. (1872)[3][4][5]
シノニム
和名
オガタマノキ(招霊木[8]、小賀玉木[9][10]、黄心樹[11])、オガタマ[10]、オガタマサカキ[10]、オガタマモクレン[10]、トキワコブシ[10]、ダイシコウ(大師香)[9][12]

オガタマノキ(招霊木、小賀玉木、学名: Magnolia compressa)は、モクレン科モクレン属に属する常緑高木の1種である(図1)。和名は、招霊(おきたま)が転じて「オガタマ」になったともされる。オガタマノキ属に分類されることが多かったが(Michelia compressa[9][13]、2022年現在ではふつうモクレン属に分類される。日本に自生するモクレン科植物の中では、唯一の常緑樹である。早春に直径3センチメートルほどの紫紅色を帯びた黄白色の花を葉腋につける。本州関東地方から台湾に分布する。神社に植栽され、ときに神事に使われる。

大賀玉の木(おがたまのき)と呼ばれる正月の飾りは、別の種類の木を用いる(#大賀玉の木参照)。

特徴

常緑高木であり、高さ10–15メートル (m)、幹の胸高直径は30–80センチメートル (cm) ほどだが[9][14][15]、大きなものは高さ 20 m、胸高直径 1.5 m に達する[16]。香りがよい[14]樹皮は暗灰褐色で平滑[9][13](下図2a)。は暗緑色、無毛または褐色の伏毛があり、托葉痕が枝を一周している[9]

2a. 樹皮
2b. 葉

互生し、葉身は狭倒卵形から長楕円状倒卵形、長さ 5–14 cm、幅 2–5 cm、全縁、先端はふつう鋭頭、基部はくさび形、革質、表面は光沢があり深緑色で無毛、裏面は白色を帯び、主脈上などに短毛がある[9][14][15](上図2b)。葉柄は長さ 2–3 cm、有毛[9][14][15]

花期は2月から4月、直径 3 cm ほどの両性花葉腋に1個ずつつく[9][14]。花柄は長さ約 1 cm[14](下図3a)。花被片はふつう12枚、萼片花弁の分化はなく全て花弁状、狭倒卵形、長さ15–25ミリメートル (mm)、内側のものがやや小さく、鋭頭、黄白色で基部が紫紅色を帯びる[9][14](下図3a)。雄しべは30–40個、長さ 4–5 mm、は長さ約 3 mm[14]雌しべ離生心皮、多数、初めは有毛[9][14][13]。雄しべ群と雌しべ群の間の花托に隙間がある[14]。花の匂いは強く[9]、その主成分は安息香酸メチルである[17]

3a. 花: 花被片基部は紫紅色を帯びる。
3b. 裂開した果実

果期は9–10月[9][14]。個々の雌しべは卵形から球形、長さ 1.5–2 cm の袋果となり、ブドウの房状に集まって長さ 5–10 cm の集合果になるが、同じモクレン属コブシなどと異なり果実は融合しない[9][14][16](上図3b)。各袋果には2–3個の種子が含まれ、種子は赤い外層で覆われる[9][14](上図3b)。染色体数は 2n = 38[14]

分布・生態

本州関東中南部以西(千葉県以西)の太平洋岸と四国九州南西諸島から台湾に分布する[14][18]

丘陵帯から山地帯下部の林地に生育する[15]

ミカドアゲハの食樹としても知られている[19]

分類

オガタマノキはオガタマノキ属Michelia)に分類されることが多かったが(Michelia compressa[9][15][13]、2022年現在ではふつうモクレン属に分類される(Magnolia compressa[5][4][14]。モクレン属の中では、オガタマノキ節(section Michelia)に分類される[2]

オガタマノキのうち、八重山列島から台湾に分布するものは葉身が狭倒卵形から狭楕円形、やや小型で長さ 5–11 cm、幅 2–4 cm、花被片が全体に黄白色であり、沖縄諸島以北に分布するもの(上記参照)とやや異なる[14]。そのため、前者を変種タイワンオガタマM. compressa var. formosana (Kaneh.) C.F.Chen (2014))、後者を基本変種の M. compressa var. compressa として区別することがある[14]

近縁種の中で、中国原産のカラタネオガタマ(別名: トウオガタマ、学名: Magnolia figo)は、日本でも庭木生け垣としてよく植栽されている[16][20]。オガタマノキのように大きくはならず、にはバナナに似た強い香りがある。

人間との関わり

和名の「オガタマノキ」は、神道思想の「招霊」(おぎたま)から転化したものといわれる[18][16]日本神話においては、天照大神天岩戸に隠れてしまった際に、天鈿女命がオガタマノキの枝を手にして天岩戸の前で舞ったとされる[21]神社によく植栽され、神木とされたり(下図4a, b)、神前に供えられたりする[9][14][16][18]。スポーツの神様として有名な白峯神宮京都市上京区)には樹齢800年と伝えられるオガタマノキがあり、京都市天然記念物に指定されている[22](下図4c)。また神楽で使われる神楽鈴は、オガタマノキの果実が裂開して種子が見える状態のものを模しているともいわれる[23](下図4d)。

材は、良質な家具材として利用されることがある[18]

4a. 男女神社(佐賀県)の御神木であるオガタマノキ
4b. 宮地嶽神社(福岡県)の御神木であるオガタマノキ(中央)
4c. 白峯神宮(京都府)のオガタマノキ

オガタマノキは、常陸宮正仁親王お印である[23]

オガタマノキは、宮崎県高千穂町[24]香川県琴平町[25]の町の木に指定されている。

オガタマノキ(黄心樹、小賀玉の花、黄心樹の花、黄心樹木蓮)は晩春の季語である[26]。ただし、漢名の「黄心樹」は別のとされる[27]。オガタマノキの花言葉は「畏敬の念」である[23]

1円硬貨にデザインされた枝葉は特定の植物をモデルとしていないが、オガタマノキがモデルであるとする風説がある[23]

大賀玉の木

大賀玉の木(おがたまのき)は新年の飾りであり、邪気を払うために1月14日の夜に門前や門松クルミネムノキの枝を飾ったものである[28]。新年の季語

脚注

出典

  1. ^ Khela, S. (2014年). “Magnolia compressa”. The IUCN Red List of Threatened Species 2014. IUCN. 2024年3月8日閲覧。
  2. ^ a b Wang, Y. B., Liu, B. B., Nie, Z. L., Chen, H. F., Chen, F. J., Figlar, R. B. & Wen, J. (2020). “Major clades and a revised classification of Magnolia and Magnoliaceae based on whole plastid genome sequences via genome skimming”. Journal of Systematics and Evolution 58 (5): 673-695. doi:10.1111/jse.12588. 
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Magnolia compressa Maxim. オガタマノキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月24日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p Magnolia compressa”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2022年2月15日閲覧。
  5. ^ a b GBIF Secretariat (2022年). “Magnolia compressa Maxim.”. GBIF Backbone Taxonomy. 2022年2月15日閲覧。
  6. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Michelia compressa (Maxim.) Sarg. オガタマノキ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月24日閲覧。
  7. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Michelia compressa (Maxim.) Sarg. var. macrantha Hatus., nom. nud. オガタマノキ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月24日閲覧。
  8. ^ 招霊木https://kotobank.jp/word/%E6%8B%9B%E9%9C%8A%E6%9C%A8コトバンクより2022年2月26日閲覧 
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 勝山輝男 (2000). “オガタマノキ”. 樹に咲く花 離弁花1. 山と渓谷社. pp. 384–385. ISBN 4-635-07003-4 
  10. ^ a b c d e 小賀玉木https://kotobank.jp/word/%E5%B0%8F%E8%B3%80%E7%8E%89%E6%9C%A8コトバンクより2022年2月26日閲覧 
  11. ^ 黄心樹https://kotobank.jp/word/%E9%BB%84%E5%BF%83%E6%A8%B9コトバンクより2022年2月26日閲覧 
  12. ^ 永利のオガタマノキ”. こころ 薩摩川内観光物産ガイド. 薩摩川内市 観光・シティセールス課&株式会社 薩摩川内市観光物産協会. 2022年2月26日閲覧。
  13. ^ a b c d Flora of China Editorial Committee. “Michelia compressa”. Flora of China. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2022年2月26日閲覧。
  14. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 大橋広好 (2015). “モクレン科”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. pp. 71–74. ISBN 978-4582535310 
  15. ^ a b c d e 馬場多久男 (1999). “オガタマノキ”. 葉でわかる樹木 625種の検索. 信濃毎日新聞社. p. 164. ISBN 978-4784098507 
  16. ^ a b c d e オガタマノキhttps://kotobank.jp/word/%E3%82%AA%E3%82%AC%E3%82%BF%E3%83%9E%E3%83%8E%E3%82%ADコトバンクより2022年2月26日閲覧 
  17. ^ 東浩司 (2004). “モクレン科の花の匂いと系統進化”. 分類 4 (1): 49-61. doi:10.18942/bunrui.KJ00004649594. 
  18. ^ a b c d 平野隆久監修『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、15頁。ISBN 4-522-21557-6 
  19. ^ 足立尚計 (1981). “伊勢神宮とミカドアゲハ: オガタマノキをめぐる両者のかかわりあい”. やどりが 1981 (105-106): 32-33. 
  20. ^ 勝山輝男 (2000). “カラタネオガタマ”. 樹に咲く花 離弁花1. 山と渓谷社. p. 385. ISBN 4-635-07003-4 
  21. ^ 天岩戸神”. 天岩戸神社. 2022年2月26日閲覧。
  22. ^ 霊木”. 白峯神宮. 2022年2月26日閲覧。
  23. ^ a b c d オガタマノキの特集!育て方や特徴など基本情報まとめ”. 暮らしーの (2021年4月6日). 2022年2月26日閲覧。
  24. ^ 町章・町花・町木・町鳥”. 高千穂町. 2022年2月26日閲覧。
  25. ^ 琴平町の町花・町木の制定について”. 琴平町. 2022年2月26日閲覧。
  26. ^ 黄心樹(おがたま/をがたま)”. きごさい歳時記. 2022年2月26日閲覧。
  27. ^ 牧野富太郎 (1989). “オガタマノキ”. In 小野幹雄・大場秀章・西田誠. 牧野新日本植物図鑑. 北隆館. p. 117. ISBN 978-4832600102 
  28. ^ 大賀玉の木”. 季語・季題辞典. 日外アソシエーツ. 2022年2月26日閲覧。

関連項目

外部リンク



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