関越自動車道高速バス事故の影響
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「ツアーバス」の記事における「関越自動車道高速バス事故の影響」の解説
上記の国土交通省による高速バス事業一本化についての報告書が公表されてからわずか23日後、2012年4月29日に関越自動車道上り線で、高速ツアーバス運転手の過労運転が原因とされる関越自動車道高速バス居眠り運転事故が発生、多数の死傷者を出した。 事故の詳細については「関越自動車道高速バス居眠り運転事故」を参照 この事故を受け、国土交通省自動車局は2012年5月29日、安全政策課内に「高速ツアーバス等の過労運転防止のための検討会」(座長:酒井一博公益財団法人労働科学研究所所長)を設置。専門家を交えた検討を行い、パブリックコメントの実施を経て、2012年7月18日に国土交通省通達「旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用について」を改定、交代運転者の配置基準を「実車距離が400km(安全点呼等の特別な安全措置を行い、これを公表した事業者については500km)を越える場合」「1人の運転者の乗務時間が10時間を越える場合」に厳格化する措置 を定めると共に、同日から高速ツアーバスを運行する貸切バス事業者の安全への自主的な取り組みや、国土交通省が実施した最近の監査状況(法令違反や行政処分の有無など)の情報公開を開始した。検討会の最終報告書は2013年4月2日に公表された。 国土交通省・観光庁は高速ツアーバスと高速乗合バスの誤認を避けるため、2012年6月29日に「高速バス表示ガイドライン」を通達し、「高速乗合バス」と「高速ツアーバス」の別などを明示するよう指導。主にツアーバス事業者に対して「ツアーバス(募集型企画旅行)」であることを明示させた。また乗合バス事業者の中にも「高速乗合バス(路線バス)」であることを明記していない事業者もあった。 関越道バス事故を受け、国土交通省は同年7月、高速ツアーバスを運行する貸切バス事業者を対象に緊急重点監査を実施。立ち入り時点で何らかの法令違反を指摘された事業者が298者中250者(調査対象の83.8%)に上り、そのうち48者(同16.1%)が重大または悪質な法令違反を指摘されていたことが明らかになった。また、各地方運輸局の管内の主要な駅等で2012年7月20日から8月31日にかけて貸切バスの一斉点検を実施したところ、332台中73台に問題があり行政指導を実施した旨が発表された。なお、行政処分を受けた事業者のうち新潟県の小千谷観光バスは処分に対し異議申立てを行ったことを公式サイトで発表している。 観光庁・都道府県庁は同年7月、旅行業者を対象に集中的立入検査 を実施、高速ツアーバスを主催する旅行代理店59者中、何らかの法令違反(大半が取引条件説明書面等の未交付、記載不足等)を指摘された会社が28者(47.4%)という結果であった。 さらに厚生労働省労働基準局は同年7月、高速ツアーバスを運行する貸切バス事業場に対する監督指導を実施し、高速ツアーバスの運行に関わる339事業場のうち、329事業場(全体の95.6%)に労働基準法違反(労働時間の超過、休日の非付与、割増賃金の不払等)を確認、260事業所(全体の76.7%)に改善基準告示違反(総拘束時間超過、最大高速時間超過、休息時間の非付与、最大運転時間超過、連続運転時間超過、休日労働等)が認められた。 国土交通省は関越道バス事故等を踏まえ、当該事故の緊急対策において引き続き検討すべきとされた運行管理者制度その他の幅広い事項について検討する場として、改めて「バス事業のあり方検討会」(座長:中村文彦横浜国立大学大学院教授)を設置。2012年10月25日から2013年3月29日まで計6回にわたり検討を行い、2013年4月2日に結果を報告した。これを受け、国土交通省では「高速・貸切バスの安全・安心回復プラン」を立案、委託者・受託者が一体となった安全管理体制(運輸安全マネジメントの実施)を2013年4月以降に構築するとともに、業界団体を中心とした適正化事業(コンサルティング)の導入を2013年5月以降に導入し、過労運転防止のための交代運転手の配置基準を路線バスにも2013年8月より適用することとなった。 これにより、一日当たりの運転手の走行距離制限が厳格化されたことから、2013年8月からは日帰りバスツアーでも設定できなくなったコースがあった。
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