近代西洋の象徴(世俗社会)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 07:05 UTC 版)
「オクシデンタリズム」の記事における「近代西洋の象徴(世俗社会)」の解説
アルカイダの司令官(アミール)オサマ・ビン・ラディンによれば、2001年の9.11テロによって近代西洋文明は崩壊した。 アメリカが主導してきた西洋文明の価値は、ここに破壊された。自由、人権、人間性の象徴と謳われたタワーは倒れ、雲煙の中に消え去ったのだ。 9.11の後まもなく、あるビデオテープが中国で売りに出されており、これは9.11の実写とハリウッド製の災害映画とが合成された映像だった。現実をフィクションと思い込むことは、現実の恐怖から離れるには容易な方法である。中国人や多くの人々にとって、9.11は映画か劇中の出来事のような印象を残した。その点で、オサマ・ビン・ラディンの作戦は大成功だった。ツインタワーとその中の人々を殲滅した行為は、現実的にも抽象的にも、「西洋との戦い」の一部だからである。大量殺戮は、「罪深き都市」の崩壊についての古代神話とも呼応した。 しかし西洋やアメリカに妬みや憎しみを感じるのは、それらが何なのか想像もできない人々ではない。普段から西洋のイメージや商品を身近に感じている人々である。9.11の合成編集ビデオを買い求めたのは ―― 貧しい農民ではなく ―― ニューヨークの摩天楼のような高層ビルがそびえ立つ、上海や北京をはじめとする大都会の若者たちだった。 ツインタワーを破壊したテロリストたちも、西洋で相当の期間を過ごし、専門教育を受けた教養ある若者たちだった。確かに、テロリストたちの重要目的は罪の浄化であり、リーダーの一人であるモハメド・アッタも女性とセックスを憎悪していた。遺言では、 私の遺体を洗うものは手袋をして、性器には直接触れないように … 妊娠している女や汚れた者には、最後の別れに来て欲しくない と述べた。しかしアッタは、カイロの大学で建築学の学位を取得し、ドイツの大学(ハンブルク工科大学)で、都市計画におけるモダニズムと伝統について論文を書いていた。ビン・ラディン自身も、かつては土木技師だった。現代技術者たちの慢心の例とされたツインタワーは、皮肉にもその技術者によって破壊されたのだった。
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