車体傾斜車両の技術革新
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/25 15:22 UTC 版)
「日本の鉄道史」の記事における「車体傾斜車両の技術革新」の解説
曲線区間を高速のまま通過する方式として、車体傾斜車両(俗にその一方式である「振り子式列車」と呼ばれる)がある。国鉄の車体傾斜車両は1973年(昭和48年)に中央本線に登場した381系電車があるが、それ以後技術的な進展が無かった。381系電車は自然振り子方式で、列車がカーブに入ってから遠心力で車体が傾き始める機構であり、この傾斜の遅れが快適性を損なっていた。この改善策としてカーブに差し掛かるタイミングに合わせて機械力で車体を傾斜する強制車体傾斜方式がある。 1989年(平成元年)にJR四国を走り始めたTSE(量産車は2000系気動車)は、自然振り子方式と強制車体傾斜方式を組み合わせた制御付き自然振り子式気動車特急で、エンジンの反トルクによる不要な揺れや、トルク伝達時にプロペラシャフトが振り子運動を阻害すると言った液体式気動車特有の問題を克服し、土讃線や予讃線の大幅なスピードアップを達成した。引き続きJR北海道のキハ281系気動車が1994年(平成6年)から営業運転を開始し、道内各都市間の到達時間の短縮を行った。 電車ではJR東海の383系電車「ワイドビューしなの」が制御振り子+自己操舵台車を採用して1995年(平成7年)から営業運転を行っている。その後旅客会社6社全てが制御振り子式の新型特急を登場させたが、車体傾斜車両への取り組みは各社の事情によって進捗度が異なる。例えばJR東海は「しなの」に使用する381系を全て383系に切り替えたが、JR西日本は新形振り子電車の283系電車を開発し、紀勢本線に投入したものの、充分な増備をしないまま旧式の381系電車を2015年(平成27年)10月まで併用、伯備線の「やくも」も381系のままである。 振り子式以外に実用化された車体傾斜方式として、枕ばね用の空気ばねを利用した強制車体傾斜方式がある。自然振り子方式と同様に1960年代から研究されてきたが、制御技術の進んだ近年まで実用化できていなかった。この方式はJR北海道が1997年(平成9年)に運用開始した201系通勤型気動車での初採用以降、同社や私鉄の特急車両の高速化、新幹線車両の更なる高速化へと利用が拡大している。 JR北海道の制御付自然振り子式気動車は1995年(平成7年)にキハ283系へと進化し、自己操舵台車の採用、変速機のクロースレシオ化、最大傾斜角度の増大などにより、特に帯広以東に線形の良くない箇所を抱える根室本線での高速化を果たした。さらにJR北海道は、制御付自然振り子装置に空気ばねによる車体傾斜装置を組み合わせ、動力方式もモータ・アシスト式ハイブリッドとしたキハ285系を開発し、量産先行車にあたる3両編成1本が2014年(平成26年)に完成した。これによりさらなる高速化を目指す計画であったが、相次ぐ重大インシデントと社員の不祥事によって国土交通省から再三にわたる特別保安監査を受けたことで、従来技術のまま安全対策に注力する経営方針へと変更されてキハ285系の量産計画は中止となり、落成した先の3両も使いみちのないまま2015年(平成27年)に廃車となった。
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