財政問題による計画の終焉
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/24 14:55 UTC 版)
「シコルスキー Xウイング」の記事における「財政問題による計画の終焉」の解説
回転翼の空力データ入手という研究機としての機能とは別に、将来的な実用機の開発への試金石としての青写真をも意図した「Xウイング」だったが、複合ヘリコプター故の必要性とはいえ、エンジンを4基も搭載する無駄に加え、抽気による回転翼制御システムとエンジン数の相乗作用もあり、燃費は通常のヘリコプターより劣った。シコルスキー社とアメリカ陸軍は、将来の実用機開発への費用増大を避ける(リスクマネジメントによる危険分散)意図を以て、同海軍にも対しても、本機の特性を活かした実用機 を開発することで、戦術(写真)偵察機、空対地任務の観測機、早期警戒機、電子戦機、対潜水艦戦向けの対潜哨戒機、捜索救難等の任務に対する X字型・回転/固定翼機 の適性があることを働きかけたが、海軍の関心は得られなかった。 思ったよりも固定翼形態での速度が出ないという運用結果もあり、ティルトローターの方が片方のエンジン停止時の安全性 (双方の発動機の回転軸の間の長大な距離を変速機を介し、分割された複数の駆動軸とその間の自在接手で連結した最新の機体と比較して) や、遷移飛行に関する困難( ヘリコプター形態から固定翼機、あるいはその逆など、“垂直離着陸 - 水平飛行”相互移行時に不安定になる )があるとはいえ、速度や燃費、航続能力でXウイングを上回り、構造の簡便さや整備性でも本機を上回るベル・ヘリコプターのXV-15や実用機 V-22 オスプレイが登場すると、Xウイングという複合ヘリコプターに対するアメリカ陸軍や、アメリカ航空宇宙局 (NASA) の関心も薄れ、1987年にアメリカ合衆国政府は優先順位の高い研究に対して資金提供を行い、他は資金提供を中止することで予算を節約することを決定し、本計画に関して契約を終了することに決定した。このため、契約終了時点でも技術開発中であった本計画は、技術的な問題ではなく資金の不足のために終了させられることになった。 1988年に計画は正式には中止(キャンセル)されている。 アメリカ陸軍が手を引いたその後も、アメリカ航空宇宙局(NASA)は地上における風洞試験やごく稀に短時間の試験飛行を仕様上の理由、つまり「肝心の X字翼自体の技術的な未熟〔資金提供の中止による開発途上での開発停止であり、技術そのものの欠陥では無かったが〕による飛行危険性」から、主として“初号機”を用いて行ったが、1997年の試験飛行を最後として同機が二度と飛行することは無く用途廃止となり、シコルスキー社が本機のデータを取り入れた実用型を開発する余地は遂に生じることは無かった。
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