象徴的解釈とは? わかりやすく解説

象徴的解釈

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 23:46 UTC 版)

老人と海」の記事における「象徴的解釈」の解説

本作対するもっとも有名な批評は、発表当初ウィリアム・フォークナーによって書かれたものであるフォークナーそれまでヘミングウェイに対して文学的な冒険をしない臆病な作家」と批判していた。 彼(ヘミングウェイ)の最高傑作。われわれ、つまり彼や私の同時代人著したどの作品にも優る作品であることを、いずれ時の経過が示すかもしれない。この作品で、彼は神を、創造主発見した。 — ワシントン・アンド・リー大学文芸誌『シェナンドア』1952年秋号寄せたウィリアム・フォークナーの『老人と海』評より。 アメリカ代表的なヘミングウェイ研究者であるカーロス・ベイカーは、『老人と海』についてフォークナーが「神、創造主」と抽象的に述べたことを具体的に表現した。すなわち、サンチャゴ老人福音書キリスト人格人間性連想させる心と精神持ち主である。老人は、大魚さらにはサメとの壮絶な闘い繰り広げるうちに、十字架に磔にされたキリスト同様の姿になり、物語が進むにつれて十字架イメージ次第強まっていくとする。このようにしてベイカーによって打ち出されたクリスチャン・シンボリズムは、この作品対す批評方向性与えるものとなった以降、『老人と海』にクリスチャン・シンボリズムを見出した批評家には、エドウィン・モーズリー(1962年)、ロバート・ルイス(1965年)、ビッグフォード・シルヴェスター(1966年)、ジョーゼフ・フローラ(1973年)らがいる。日本では松坂仁伺が『老人と海』について、釣り物語宗教的なメッセージ二重構造であるとし、新約聖書のヨハネによる福音書21章との関連指摘しつつ、和解がこの作品のテーマだとする。また、江頭理江桑野健太郎は、キューバに伝わる「コブレ聖母伝説と『老人と海』の関連指摘している。 このように、『老人と海』の批評は、ニュー・クリティシズムの中のクリスチャン・シンボリズムの観点から読む批評主流となった1980年代以降にはニーチェ哲学フランス印象派絵画との類似性注目する批評現れてくるが、これらもクリスチャン・シンボリズムからの派生とみなすことができる。いずれにせよ、これらアメリカ批評顕著に見られるのは宗教的審美的な傾向であり、この作品からキューバ現実社会性見ようとしない姿勢である。このことは、1940年の『誰がために鐘は鳴る』に見られたような社会性が、『老人と海』では失われた受け止められたことを示唆している。 また、老人夢の中繰り返し現れて、この作品最後締めくくるライオンは、一般に勇気希望培う象徴的イメージと見なされている。これについて、松坂によればライオン(lion)はマノーリン(Manolin)の名前の後半部分のアナグラムであり、つまりライオン少年実質的に同じものだとしている。さらに江頭桑野によればサンチャゴとマノーリンとライオンは「コブレ聖母伝説登場する3人の漁師ということになる。 これに対してヘミングウェイ自身美術史家バーナード・ベレンソンの手紙に「海は海であり、老人老人であり、少年少年であり、マカジキマカジキであり、サメサメであり、シンボル何もない」として「世間でいうシンボリズムなどはゴミ」と述べている一方で、「リアルな老人リアルな少年リアルな海、リアルなリアルなサメを、私は描こう試みた。しかし、もしそれ成功し、十分リアルに描けていれば、それらは多くのことを意味しうる……。ひとつの物事をきちんと誠意をもって描けば描くほど、のちに別の多くのことを意味するのだ……。」とも述べている。

※この「象徴的解釈」の解説は、「老人と海」の解説の一部です。
「象徴的解釈」を含む「老人と海」の記事については、「老人と海」の概要を参照ください。

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