裁判員の出頭義務
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 15:24 UTC 版)
裁判員法第52条により、裁判員には出頭義務が課せられているが、裁判員になることについては、法定の理由がない限り拒否できない。裁判員法第15条により、国会議員、国務大臣、裁判官、弁護士、弁理士、司法書士、公証人、検察官、警察官、自衛官などの職業にある者は、裁判員となることができない(就職禁止事由)。 裁判員法第16条(及び同条の委任を受けた政令)により、重病や70歳以上、親族等の介護養育等の必要、事業上・社会生活上の重要な用務、精神上・経済上の重大な不利益など一定の事由があれば、辞退が認められる(高齢者でも、志願すれば参加することはできる)。 また、引っ越し前の住所地を管轄する裁判所の管轄区域外に引っ越し、裁判所に来ることが困難となる場合にも、辞退を申し出ることができる(前記政令5号)。 なお、平成21年度の対象事件において、選定された裁判員候補者総数のうち選任手続期日前の段階で辞退が認められた者の割合は48.8%であり、選任手続期日当日に辞退申出をした者のうち辞退が認められた者の割合は82.2%である。 トヨタ自動車や東京電力など一部の大手企業では、裁判員に選任された場合に備え、専用の有給休暇制度を新設しているが、全ての企業でそのような制度を新設できず、欠勤しなければならない場合もある。 学校に通わず勉学を続ける浪人生や20歳以上の高等学校通信教育、通信制大学・大学院の学生・院生が裁判員に選任された場合、受験勉強や高卒・大卒・院修了などの学歴・学位取得に影響を及ぼす。浪人生・通信制学校の学生は裁判員法第16条第3項の辞退事由に当たらず、例えば、「精神上又は経済上の重大な不利益が生ずると認めるに足りる相当の理由」(裁判員法16条8号柱書、前記政令6号)による辞退を検討することになる。 地方裁判所が、その年の裁判員候補者名簿を作成した際に送付する「調査票」(規則15条1項)では、介護や育児、仕事などで都合が悪い等の期間を2ヶ月しか申告できないという制限があるが、この制限には法的根拠がない。幼児・児童や高齢者と同居する主婦が申告期間外に裁判員に選任された場合、介護や育児に支障を及ぼす。もっとも、個々の事件について実際に呼び出されることになった裁判員候補者には、改めて「質問票」(法30条1項)が送付されるから、そのような事由のある者は、前記「調査票」で申告した期間とは無関係に、辞退の申出をすることができる。 かつては人に裁判員の職務を強制することは、意に反する苦役を禁じる日本国憲法第18条に反するとか、労働三権を制限するとか、憲法に存在しない義務を国民に課すもので憲法違反であるとかの主張もあったが、最高裁は、「裁判員の職務等は,憲法18条後段が禁ずる「苦役」に当たらないことは明らかであり,また,裁判員又は裁判員候補者のその他の基本的人権を侵害するところも見当たらないというべきである。」と判示している(最高裁平成23年11月16日大法廷判決)。
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