裁判員の守秘義務
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 15:24 UTC 版)
裁判員は審理に関して終身(一生涯)の守秘義務を負う。「裁判員メンタルヘルスサポート窓口」への相談 及び、精神科医・心療内科医・臨床心理士によるカウンセリングといった、ごく一部の場合を除き、「評議の秘密」ならびに、その他「職務上知り得た秘密」を公にしてはならない。違反した場合は6か月以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑になる。 裁判員の守秘義務は裁判官より重い。裁判官の守秘義務は範囲が狭く、終身のものではないため、公平になっていない。 裁判員と同じ裁判体を構成する裁判官は弾劾裁判・分限裁判で免職になるなどするケースはあるが、刑事罰の罰則規定がない。しかも、退職後は守秘義務を担保する規定が存在しない(参照:憲法第14条・法の下の平等)。 裁判員法第9条第2項において、裁判員による漏洩を禁じている「職務上知り得た秘密」という語句は、その範囲が不明確罪刑法定主義に反するとする主張がある。法務省の説明によれば、関係者のプライバシーに関する情報、評議の推移と内容に関する情報を含み、公判で開示された証拠の情報、裁判員制度それ自体に関する情報を含まない。 裁判員自身が評議においてどう判断したかを公にすることを処罰することは、「思想及び良心の自由」を規定した日本国憲法第19条及び「表現の自由」を規定した日本国憲法第21条を侵害することになるとする主張もある。 裁判員法の罰則は、日本国領土内でのみ拘束力を持つ属地主義のため、裁判員経験者が海外に赴き、現地特派員等に評議で知り得たことを漏洩することが可能である。さらに、裁判員経験者が日本国籍を放棄すれば、裁判員法を含む日本国法の管理下から外れるため、日本国領土内外に関わらず、評議で知り得たこと全てを漏洩することが可能になるとの見解がある。 守秘義務と参加義務については検察審査会も同様の問題を抱えている。 守秘義務違反に当たる例としては、2010年11月12日に札幌地裁で判決が言い渡された強制わいせつ致傷事件の裁判員裁判で、裁判員の一人が、判決後の会見で、裁判員と補充裁判員の評議内容を漏らした事例がある。同地裁としては、事前に注意することが事前規制に該当するとして、対応に苦慮している。
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