衣のユニバーサルデザイン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/11 01:55 UTC 版)
「ユニバーサルデザイン」の記事における「衣のユニバーサルデザイン」の解説
「衣のユニバーサルデザイン(以下UD)」とは、衣服などができるだけ多くの人に受け入れられ、楽しまれるためのデザインである。衣のUDに必要な要素は多様であるが、審美性、機能性、有用性、社会性、安全性、視認性などが重要である。 <審美性:時代感覚やおしゃれ感、ファッション性を大切に> 年齢や障害にかかわらず、おしゃれを楽しめる魅力的なデザイン、素材、色、柄であることが重要である。高齢者だから地味に、という固定的な考えでなく、むしろ「孫とお揃い、色違い」といった感覚で、楽しみながら着こなせるのがよりユニバーサルであるといえる。 <機能性:服のサイズや体形に不満を持つユーザーや車いす利用者などに配慮する> 年齢が変わってもファッションを楽しめるよう、多様なサイズを取り揃える。5歳と25歳では当然のことながら体格が変わるが、大人になっても25歳、45歳、そして65歳と加齢に伴って、骨格、体形、筋肉、脂肪のつき方等が変わるので、それに対応した適切なパターンと多様な選択肢が求められる。着物や浴衣は、その柔軟性・可変性という点では、ユニバーサルといえる。車いす利用者のスラックスは後ろ股上を深くして座りやすくしたり、ジャケットなどの前丈を短くして座ってもかっこよく見えるようにする。 <有用性:身体機能の低下やサイズ調整などに配慮する> 関節が動かしにくい、指先が動かしづらいなどの人のために、これまでも、ボタンの替わりにファスナー、さらにはベルクロ(商品名としてはマジックテープとして知られる)といった着脱を助けるための道具が開発されてきた。コートの内側につける取り外し可能な薄手の防寒ベストは、体温調整が難しい人にはもちろん、季節の変わり目には誰にとっても有用である。背面にかけて縫い目の少ないデザインの衣服は、車いすユーザーには必須だが、同様に座る時間の長い運転手などにも、肌が擦れなくて良い。スカートやスラックスのウエストに調整可能なデザインを取り入れると、年齢を問わず着易さが増す。 <安全性:安全への配慮> 災害の発生時に着脱しやすい機能を取り入れる。例えば、けがを防ぐためにフード(頭巾)に衝撃吸収材を入れる。ファスナーは緊急時に上下で開閉可能なものを使用して、着脱が素早くできるようにする。また、発生時のみならず、予防の観点も重要である。パジャマや浴衣を始め、袖などの着火しやすい箇所には、燃えにくい難燃性素材を使用する。夜間の外出時には、反射材を用いた靴や衣類を使用することで事故を予防することは、子ども、学生、高齢者など多様な人にとって有効である。 <社会性:環境への配慮> 製造や流通、販売の過程において、環境や持続可能性(サスティナビリティ)に配慮する。オーガニックな素材を育て、用いることで、環境に配慮し、化学物質過敏症の人も利用可能な衣類となる。また、誰でも使えるアクセシブルな試着室は、車いすやベビーカーユーザー、LGBTQの人にとっても、利用可能なものとなる。 <視認性:わかりやすさ> 衣類の着脱の方法が、直感的にわかりやすいことは最低条件である。どうすれば袖を通せるのか理解に苦しむブラウスや、複雑極まる紐結びの靴などのファッションも存在するが、それらはUDからほど遠い。また、購入時にはサイズや素材、利用時には洗濯の方法などを確認する必要があるため、品質表示、洗濯表示、サイズ表示などの文字やピクトグラムなどの記号は、書体や色使いに配慮する。
※この「衣のユニバーサルデザイン」の解説は、「ユニバーサルデザイン」の解説の一部です。
「衣のユニバーサルデザイン」を含む「ユニバーサルデザイン」の記事については、「ユニバーサルデザイン」の概要を参照ください。
- 衣のユニバーサルデザインのページへのリンク