血球の起原
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昭和35(1960)年11月に開催された、創立70周年記念・第152回東京歯科大学学会総会での特別講演「赤血球はなにをしているのであるか?」の発表に向け、森下は上記3つの基礎理論の根拠となった研究論文を総括し、新学説の概要として「血球の起原」に纏め、総会直前の9月に出版した。 ここには、すでに10年ほど前から提唱している新しい血液理論(森下理論)を裏付ける研究内容と、実験・観察における顕微鏡写真(映画撮影を含む)を掲載している。 それらの研究過程において、生命の最小単位についても新たな発見を記している。 昭和35 - 6(1960 - 1961)年、森下の生理学教室において「血管外無菌血液」の終末変化を研究した。つまり、血液を無菌的な条件のもとで試験管の中に放置しておけば、最後はどのように変わるのかを追求するのが目的である。 完全に滅菌・無菌処理した特殊な試験管に無菌血液を入れ、滅菌空気の酸素を注入しつつ1 - 2ヶ月間培養して、大学の研究員をつかい詳細に探索した。結論として、無菌的な血液でありながら、実は赤血球の中に点状のバクテリア様の微小体が発生し、これが血漿の中でだんだん発育して球菌になり、かつ、桿菌にまで発展をするという事実を認めている(PLATE Ⅷ:血球の起原p100)。 森下はこれを「生理的ビールス」と呼んだ。実験的に細胞のある一部分を切り離し、そのちぎれた部分だけを上手く培養していくと、かなり長期に生命を保ち続ける。そうした実験からも、細胞を生命の最小単位とすることに疑問を呈している。 ただし、後世で「生理的ビールス」よりもさらに小さな生命単位が発見される可能性もあることから、本研究の結論は「細胞は、さらに小さな単位からできている」とした。 生命の最小単位がこうした顆粒にあると理解すれば、バクテリアと赤血球の可逆的な関係、および赤血球、白血球、細胞との相互間にも、すべて可逆的な関係があることを説明づけられる。生命とは、現代医学が考えるよりも遥かに混とんとしてダイナミックなものである。この考えは、自然界での調和を重視した東洋医学に近い。 <PLATE VⅢ:血球の起原p100> 生理食塩水を加えたヒキガエルの血液の凝固開始時。赤血球の細胞質は、放射状に樹状結晶をみせる。中央部の隆起は、赤血球の核である。 上記1の条件下における血液凝固の完了。赤血球細胞質の樹枝状結晶が、ちょうどフィブリンのように赤血球を絡めている。このような現象は、血液凝固に主役を演ずる要因が、赤血球とくにその細胞質であることを物語っている。 無菌的条件下で放置されたヒキガエルの赤血球。2 - 3日経過すると、赤血球の細胞質内に小さな液胞が多数発生し、その小液胞の個々に球菌様の微小体が現れてくる。 この球菌(様微小体)の発生は、細胞質全域に及び、赤血球の崩壊をみるに至る。また、いくつかの球菌が連結して桿菌化する現象もみられる。 無菌的条件下で数日ないし1週間を経過した後の赤血球。赤血球の細胞質が球菌、次いで桿菌に変化していくため、赤血球細胞質が間隙だらけになる。なお、核も粒子化の傾向をみせる。 先の5からさらに数日を経過した場合。赤血球の細胞質は完全に桿菌化し、核のみとなる。その核もまた桿菌化しはじめ、やがて赤血球の形態は完全に消失してしまうことになる。
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