自然科学者としての業績
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「ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ」の記事における「自然科学者としての業績」の解説
ゲーテは学生時代から自然科学研究に興味を持ち続け、文学活動や公務の傍らで人体解剖学、植物学、地質学、光学などの著作・研究を残している。20代のころから骨相学の研究者ヨハン・カスパー・ラヴァーターと親交のあったゲーテは骨学に造詣が深く、1784年にはそれまでヒトにはないと考えられていた前顎骨がヒトでも胎児の時にあることを発見し比較解剖学に貢献している。 自然科学についてゲーテの思想を特徴付けているのは原型(Urform)という概念である。ゲーテはまず骨学において、すべての骨格器官の基になっている「元器官」という概念を考え出し、脊椎がこれにあたると考えていた。1790年に著した「植物変態論」ではこの考えを植物に応用し、すべての植物は唯一つの「原植物」(独:de:Urpflanze)から発展したものと考え、また植物の花を構成する花弁や雄しべ等の各器官は様々な形に変化した「葉」が集合してできた結果であるとした。このような考えからゲーテはリンネの分類学を批判し、「形態学(Morphologie)」と名づけた新しい学問を提唱したが、これは進化論の先駆けであるとも言われている。 またゲーテは20代半ばのころ、ワイマール公国の顧問官としてイルメナウ鉱山を視察したことから鉱山学、地質学を学び、イタリア滞在中を含め生涯にわたって各地の石を蒐集しており、そのコレクションは1万9000点にも及んでいる。なお針鉄鉱の英名「ゲータイト(goethite)」はゲーテの名にちなむものであり、ゲーテと親交のあった鉱物学者によって1806年に名づけられた。 晩年のゲーテは光学の研究に力を注いだ。1810年に発表された『色彩論』は20年をかけた大著である。この書物でゲーテは青と黄をもっとも根源的な色とし、また色彩は光と闇との相互作用によって生まれるものと考えてニュートンのスペクトル分析を批判した。ゲーテの色彩論は発表当時から科学者の間でほとんど省みられることがなかったが、ヘーゲルやシェリングはゲーテの説に賛同している。 科学研究での日本語訳(近年刊行) 『自然と象徴 自然科学論集』(高橋義人・前田富士男編訳、冨山房百科文庫、1982年)、のち新装版 『色彩論 完訳版』(全2巻+別冊:高橋義人・前田富士男ほか訳・解説、工作舎、1999年) ISBN 9784875023203 『色彩論』 木村直司訳(ちくま学芸文庫、2001年) ISBN 9784480086198 『ゲーテ 形態学論集 植物篇』、『動物篇』(木村直司編訳、ちくま学芸文庫、2009年3・4月) 『ゲーテ 地質学論集 鉱物篇』、『気象篇』(木村直司編訳、ちくま学芸文庫、2010年6・7月) 『ゲーテ全集(14) 自然科学論』(木村直司・高橋義人ほか訳、潮出版社、新版2003年)
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