自然哲学における空間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/10 00:55 UTC 版)
自然哲学における理解を解説する。 アリストテレスは、自然学の基礎的概念として、事物の場所「トポス topos」としての空間概念を用い、物事の運動kinesisを説明した。トポスは「接触面」として、諸元素に対して能動的な作用を及ぼす実在であって、それぞれの本性により、火は上方に、土は下方の場所へと運動する、とした。→『トポス論』 後にアリストテレスの自然哲学はクラウディオス・プトレマイオスの天文学と合体し、性質的な差異と階層構造をもつ有限宇宙が想定された。月下界には月下界特有の性質・法則があり、月の向こう側の空間には、そこ独特の性質・法則があると考えられていた。空間というのは、位置によって性質が異なる、と一般に考えられていたのである。人々は、空間は位置により性質が違うから、地上のものは落下するが、惑星は落ちないまま円運動を続けている、と考えていた。空間は相対的なものであった(宇宙論を参照)。 ルネ・デカルトが1633年に執筆した『宇宙論』の原稿においては、物体とは独立の空間を認めており、運動というのは空間の中のある位置から別の位置への移動」として簡潔に定義できるものであった(だが、この書はデカルトの生前には出版されなかった。出版は死後である。)。その後のデカルトの渦動説によれば、空間にはすきまなく目に見えない何かが満ちており、物が移動すると渦が生じている、物体は「渦」によって動かされている、と説明された(重力を説明する古典力学的理論を参照)。 自然哲学者アイザック・ニュートンは、上述のデカルトの渦動説は本で読んだものの、その体系に相当無理があると気づいていた。ニュートンは一般に公表はされなかったものの、『重力および流体の平衡について』という書きかけの手稿(『自然哲学の数学的諸原理』が出版される相当前に書かれたもの)を残しており、そこでデカルトの渦動説を名指しで批判している。そして、その手稿で「場所とは物体が占める空間の一部」とし、「静止とは同じ場所にとどまること」「運動とは場所の変化である」としていた(ただしこれは公表されなかった)。 ニュートンは、古代以来の「場所により空間の性質が異なる」という考え方に変化をもたすことにもなった。ニュートンは、天界の惑星の運動と地上の物体の落下が同一のしくみによってもたらされているとしても説明可能だと見抜き、「万有引力の法則」を公表した(『自然哲学の数学的諸原理』)。ニュートンはユークリッド幾何学を用いて、自らの理論体系を構築した。(当時、人類が知っていた幾何学はユークリッド幾何学だけであった。。)よって、ニュートン力学においては空間は、無限に広がる3次元のユークリッド空間と想定されていることになる。『自然哲学の数学的諸原理』の冒頭部分の「定義」に続く箇所において、絶対空間と絶対時間という概念を導入した。「そのnature本性において、外界のいかなるものとも関係がなく、常に同じままで、不動の」と説明されている。ニュートンの力学体系では、空間は均一の性質で広がるものと想定されるようになり「絶対空間」と呼ばれたのである。また、ニュートンは同著においてその説明につづいて、絶対運動および相対運動について説明を行ない、バケツの中に水を入れ回転させる実験の説明を行った。 また、ニュートンは宇宙の空間のすべての位置・点が、全ての天体の位置と質量を知っているということから、空間というのは「神の感覚中枢 (sensorium dei)」であると述べた。神は絶対性を有しており、宇宙のあらゆる空間に神はあまねく存在している(遍在している)としたのである。(『光学』)。 ライプニッツは空間というのは、同時に存在する事物の秩序、ととらえた。空間は表象と表象との関係によって定義される、とした。よってライプニッツの考えでは、ニュートンが言うような絶対空間というようなものは否定した。
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