メアリー・マローン
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メアリー・マローン(Mary Mallon、1869年9月23日 - 1938年11月11日)は、世界で初めて臨床報告されたチフス菌(Salmonella enterica serovar Typhi)の健康保菌者(発病はしないが病原体に感染している不顕性感染となり感染源となる人)。アイルランドからニューヨークに移住したアイルランド系アメリカ人で、1900年代初頭にニューヨーク市周辺で散発した腸チフス(Typhoid fever)の原因になった。腸チフスのメアリーあるいはチフスのメアリー(Typhoid Mary、タイフォイド・メアリー)という通称で知られる。
- 1 メアリー・マローンとは
- 2 メアリー・マローンの概要
腸チフスのメアリー
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「メアリー・マローン」の記事における「腸チフスのメアリー」の解説
これらの富豪の一人から腸チフスの原因を解明する仕事を依頼された衛生士、ジョージ・ソーパー(英語版)は、疫学的な調査を地道に行い、その結果一つの事実を見出した。それは、メアリーが雇われた家庭のほとんどで、彼女がやってきた直後に腸チフスが発生しているということだった。この結果から、ソーパーはメアリーがチフス菌の保菌者ではないかと疑い、1907年にメアリーが雇われていたニューヨーク近郊の富豪宅を訪れた。 彼女が感染源として多くの犠牲者を出したことを告げ、調査のために尿と糞便のサンプル提出を求めたソーパーを、メアリーは激昂して追い返した。しかし自分の調査結果に確信を抱いていたソーパーは、ニューヨーク市衛生局(英語版)に勤めていたハーマン・ビッグスに自分の仮説を告げて相談した。ビッグスもまたソーパーの考えに賛同し、医師のサラ・ジョセフィン・ベーカー(英語版)をメアリーの元に赴かせ、再び説得に当たった。しかし、それでもメアリーが大きな金属製のフォークを振り回して激しく抵抗したため、三度目にはとうとう五人の警官が共に赴き、5時間の探索の末にクローゼットに身を潜めていたメアリーを見つけ出し、強制的に彼女の身柄を確保した。 ニューヨーク市衛生局で細菌学的な検査が行われた結果、彼女の便からチフス菌が検出された。このため彼女はノース・ブラザー島(英語版)の病院に収容、隔離された。しかしメアリーはそれまで腸チフスを発症したことがなく、彼女自身が病気になったり、保菌者であるという自覚のないまま、周囲の人に感染を広げる健康保菌者(無症候性キャリア)であった。その当時の細菌学の考えでは、特にチフス菌のように毒性の高い細菌がこのような「表に出ない感染」(不顕性感染)を起こすということは知られておらず、ソーパーはこの特殊な症例を1907年6月15日付けのJAMA(Journal of the American Medical Association)誌に発表した。 しかしこの検査結果を突きつけられてもメアリーは納得しなかった。彼女はそれなりに教養を身に付けてはいたが、「健康保菌者が存在する」という考えは当時の社会一般から見ればあまりにも突飛なものであったため彼女には受け入れられず、むしろ「いわれのない不当な扱いを受けている」という思いを募らせるばかりであった。何よりも彼女が頑なな考え方の持ち主であったことがその最大の理由であったとされるが、不衛生なスラム街に住むアイルランド系などの移民を疫病の原因と考えていた差別への反発もあった。市衛生局は1年以上にわたってメアリーの便からチフス菌が排出され続けていることを確認していたが、メアリーはサンプルを別の医師に送って独自に検査を行い、チフス菌が検出されなかったという報告を受けたことで、さらに自分が不当な扱いを受けているという確信を強め、隔離から2年が経過した1909年に、市衛生局を相手に隔離の中止を求めて訴訟を起こした。この訴訟の間も、メアリーは隔離されたままであり、病室のガラス越しに新聞記者の取材を受けた。これが世間の注目を集め「Typhoid Mary」の名を広めるきっかけになったと言われる。 訴訟は衛生局側の勝訴で終わったが、この訴訟によってメアリーには隔離から解放されるきっかけが与えられることになった。そして1910年、(1)食品を扱う職業には就かないこと、(2)定期的にその居住地を明らかにすること、という2つの条件を飲むことで、メアリーは隔離病棟から出ることを許され、再び自由を得た。
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