脱北理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 07:13 UTC 版)
かつて北朝鮮を脱出して韓国に亡命してくる者は、大抵が政治的な理由で故郷を追われた人々であった。特に1945年の連合軍による分割占領から1953年の朝鮮戦争休戦協定締結までの混乱期にはおびただしい数の移動があり、1000万人とも言われる離散家族が生まれることとなった。その後、冷戦下で北朝鮮の政治体制は安定化し、亡命者は激減した。なお、韓国は1980年代まで厳しい反共産主義の軍部独裁政権が国を統治していたため、北から逃れてきた人はまず偽装亡命してきたスパイでないか徹底的に取り調べられ(現実に多数のスパイが対南工作のため韓国に潜入していた)、拷問もされたという。 1990年代から、脱北者に対する措置が寛大化すると、次第に脱北者の韓国亡命が増えていく。1993年に北朝鮮で大水害が発生し、以降水害と旱魃が毎年のように発生、深刻な食糧難が報じられるようになると、大飢饉が報じられた1995年から徐々に亡命者が増え始め、2002年には遂に年間1,000人を超えた。2004年には韓国に亡命した脱北者が朝鮮戦争後からの累計で6,000人を超え、2007年2月16日には遂に1万人を超えたと韓国統一部当局者が明らかにした。ただし、2011年に北朝鮮最高指導者の金正日が死去し、金正恩が最高指導者の座についてからは亡命者の数が減少傾向にある。更に2020年1月に新型コロナ感染症流行に対する対策の一環で中国側の国境を閉鎖したことにより、2020年の韓国への脱北者が前年の4分の1以下と激減した(韓国への脱北は、最初に中国に入り数年過ごした後、第三国を経由して最終的に韓国に向かうのが一般的である)。そして、新型コロナ感染者が中国から北朝鮮へ侵入されないよう侵入者への射殺命令も下されている。 また脱北後、いったん韓国で生活してから、韓国人として日本に入国し、日本で生活する者もいるという。ほとんどが女性でその数1000人以上だといわれている。日本に直接渡った脱北者は、2013年2月時点で、約200人と考えられている。 なお、脱北者の潜在的な数は数十万人になると推測されているが、正確な数は不明である。 2016年、韓国統一部は、韓国に入国した脱北者の累計が3万人を突破したと発表した。また、経済的な理由から脱北を決意した脱北者の割合は年々低下しているとされる。核兵器を開発する北朝鮮での生活水準が中級もしくは上級であったと答える脱北者の割合も、2005年まででは13.7%だったのが、2014年から2016年にかけては66.8%に伸びた。また、近年では海外でYouTubeを見て脱北を決断する者も出てきている。
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