絵柄と表現法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/12/18 13:37 UTC 版)
本作のスタイルは西欧のグラフィックノベルとは異なっている。多くのページは全体が1枚の絵となっており、そこに文章が添えられる。1枚の絵だけで一つのシーンとなる場合もあれば、見開き2ページに描かれた2枚の絵が出来事のシークエンスを表すこともある。 ナレーションはマレーシア風の英語(マングリッシュ(英語版))で語られており、文法構造は単純で、ところどころにマレー語の語句が使われている。児童書の書評誌 The Bulletin of the Center for Children's Books の編集者デボラ・スティーヴンソンは、このナレーションが読者との間に一体感を作り出し、「家族や隣人、村の暮らしへの愛情をさりげなく」表現しているとした。ジ・エイジ紙にレビューを寄せたマイク・シャトルワースは、本書は文章で書かれた内容と反対の絵を描くことでおかしさを出している箇所が多いと述べた。スティーブンソンも同様の指摘をしており、マットが母親から優しくお粥を食べさせてもらったと語る場面を取り上げている。このとき絵の方では、母親は赤ん坊のマットがお粥を吐きかけてくるのに苛立った様子を見せている。 Magpies 誌のレビュアー、ケヴィン・スタインバーガーは、ラットのレイアウトが本作を「ついつい誘い込まれるような読み物」にしているという。またラットのペン画は「空間を作り出し、実体を感じさせるために、白黒の強いコントラスト」に頼っていると述べた。ラット自身は自分のペンタッチをそのまま生かすためにハーフトーンを用いないと述べている。 『カンポンボーイ』の子供たちは「頭はモップのようにぼさぼさで、歯を見せて笑っており、足は裸足で、お尻はむき出しか腰布を巻いて」描かれるのがほとんどであり、しばしば周囲の大人の世界と比べて「大げさなほど小さく」描かれる。ラットは少年の描き方について1950年代に読んだ漫画から影響を受けた部分があると述べている。それらの本で主役を務めるのは決まって「モジャモジャ頭の腕白小僧」だった。大人のキャラクターは、膨らんだズボンやバタフライ型メガネのように衣服や小物が誇張されていて容易に見分けられる。「背が低くて丸っこい」体形はキャラクターデザインの特徴である。キャラクターの表情は大きく誇張され、特に読者に正面を向けたときにそれが顕著である。 司書・コミック批評家のフランシスカ・ゴールドスミスは、ラットの風景が「落書き風」でありながら「驚くほど細密」だとした。コミックジャーナリストのグレッグ・マケルハットンも本作が「カリカチュアと入念に描かれたディテールの一風変わった組み合わせ」だと評した。ムリヤディもこれらの論者と同様に、キャラクターはもちろん周囲の状況にまで鋭い観察力を行き渡らせるラットの強みが『カンポンボーイ』で発揮されたと主張している。ムリヤディによると、ラットのキャラクターは本物のマレーシア人がするような見た目、服装、行動、話し方をする。場所も地元のジャングルや村落、都市だとすぐにわかる。このような正確なディテールが、マレーシアの読者には親近感を感じさせ、外国人に対してもシーンに説得力を与えている。
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