第1話「1時23分45秒」
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「チェルノブイリ (テレビドラマ)」の記事における「第1話「1時23分45秒」」の解説
1988年4月、モスクワでKGBの監視下にあった51歳の科学者が、ある告発の録音テープを秘密の場所に隠した後、自宅で首吊り自殺した。彼は、チェルノブイリ原発事故の調査と収束を指揮した人物である。 1986年4月26日未明、つわりで目覚めたワシリー・イグナテンコ消防士の妻のリュドミラは、地響きと共に爆発音を聞く。遠方のチェルノブイリ原子力発電所が建屋から上がる炎と青白い光束で夜空を照らす、異様な光景が窓越しに見える。ほどなく、建屋に発生した火災を消火するための出動命令が下される。消防士たちは化学事故の発生を疑う。一方、発電所の制御室では、咄嗟に何が起きたのか、誰も分からない。責任者のディアトロフ副技師長は、タービンホールから出火という報告を受けて、非常用タンクが爆発したのだと思い込んで、原子炉の爆発の可能性を疑わなくなる。制御棒を炉心に挿入するため、自ら予備室に出向くが、その途中、衝撃波で割れた窓から、炉心で減速材として使うグラファイト(黒鉛)片が地上に散乱しているのを見ても、認識が変わらない。死の灰が飛び散る中、放射線焼けを負う部下たちが次々と最悪の事態を予感し始める一方で、炉心への注水操作の必要に心を奪われてしまう。現場に到着した消防士たちは口々に「金属の味がする」とつぶやき、間もなく、通常の火災にはない、異様な雰囲気を感じ取る。グラファイト片をつかんだ消防士の手は、放射線焼けでボロボロになる。 連絡を受けたブリュハーノフ所長とフォーミン技師長が到着するが、非常用タンクの爆発と建屋の火災というディアトロフの話を鵜呑みにする。同じ頃、原発から離れた橋で花火を見物するかのごとく火災を見守る老若男女の上に、死の灰が粉雪のように降り注ぎ始める。爆発の際、命じられるがまま制御棒を操作していたアキーモフ副技師長とトプトゥーノフは、爆発により既に炉心が無くなっていることを知りつつ、自責の念から、手動注水操作を行うために炉心近くの注水バルブに赴く。黙々と作業する2人の身体は次第に放射線焼けに覆われていく。プリピチャチ市執行委員会は、パニックを防ぐため、情報を統制し、市民の避難を禁止するという政治決定を下す。その間、高性能な線量計での測定も行われるが、非常用タンクの爆発説が信じられているので、誰も測定結果を信じない。遂には、ディアトロフ自ら屋上から見下ろして炉心の無事を確認すると言い出すが、放射線障害で嘔吐し、それに至らない。兵士2人によって運び出された彼の目には、原子炉から立ち上るまがまがしい黒煙や、被曝して救急車で運ばれる消防士たちの姿が遂に目に入る。嫌がるシトニコフは強要されて、屋上から燃え盛る炉心を見下ろすことになる。その顔も見る間に放射線焼けに覆われていく。 その頃、クルチャトフ原子力研究所の第1副所長であるヴァレリー・レガソフ博士の下へ、閣僚会議副議長兼エネルギー部門担当のシチェルビナを名乗る人物から、RBMK原子炉の専門家としての事故処理のための政府委員会への出席を求める電話が掛かってくる。不用意な発言を慎むよう釘を刺して電話が切られ、伝えられた放射線の数値にレガソフは不安を覚える。 夜が明け、危機的状況を知らされないプリピャチの子供達が通学する歩道に、一羽の鳥が落ちて来て死んだ。火勢の衰えない発電所が吐き出した煤煙が、赤く枯れ始めた森を越えて市街地へと流れて行く。
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