第二世代:殺人事件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 07:00 UTC 版)
「ブラックメタル」の記事における「第二世代:殺人事件」の解説
続いて1990年代には、Emperor、Mayhem、Darkthrone、Burzumといったノルウェー出身のバンドが活躍し始め、ブラックメタルという音楽をよりはっきりさせた。Mayhemのヴォーカリストであるデッドが自殺し 、Darkthroneが2ndアルバム"A Blaze in the Northern Sky"をリリースした直後にユーロニモスがつくりあげたブラックメタルシーンを俗に"第二世代"と呼ぶ。長らく人の知るところではなかったブラックメタルが俄に注目を浴び、その名が広まるに至ったのは、これらのバンドのメンバーを中心に起こった「自殺、教会への放火、殺人」など数々の事件や犯罪行為、およびそれらをセンセーショナルに取り上げたメディアによる影響が大きい。 アンダーグラウンド主義の元、メジャー音楽に攻撃をしかけ、ツアー中のアーティストの家を放火・ツアーバスを転倒させる、等の行動も起こしていた彼らおよびそのファン達は、ブラックメタルマフィアとも呼ばれた。また、シーンの中核には反キリスト教集団「ブラックメタル・インナーサークル」(Black Metal Inner Circle)が存在するとされ、その集団内での格付けは行った犯罪の大きさで決まったとさえも言われた。(詳細は→ブラックメタル・インナーサークル) しかし、1993年8月、バーズム の中心人物、「Count Grishnackh(カウント・グリシュナック)」ことヴァルグ・ヴィーケネスが、ブラックメタル・インナーサークル及びMayhemのリーダーであった「ユーロニモスことオイスタイン・アーセスを殺害する事件」を起こす。この事件でヴァルグがついに逮捕され、懲役21年という判決を受けた事をきっかけに、バンドのメンバーらの犯罪が次々と発覚して逮捕者が続出し、初期のブラックメタルシーンは崩壊してしまう。 また、同時期に他国でも様々なシーンが誕生していた。ポーランドではグレイヴランドとベヒーモスによってシーンが築かれている。アメリカではBlack Funeral、Grand Belial's Key、Judas Iscariotらが活躍している。 フランスではアンダーグラウンドシーンのミュージシャンが集まり、Les Légions Noiresというグループが結成されるに至った。著名なバンドではMütiilation、Vlad Tepes、Belketre、Torgeistがいる。同時にナショナル・ソーシャリスト・ブラックメタル(NSBM)シーンも勃興している。AntaeusのMkMはあるインタビューで「(この時期のフランスのシーンは)とても簡単に整理できる。NSBMを選んで、ファンジンと聴衆からのサポートを受けるか、the Black Legionsの一員になってあの'カルト'なアウラを身に纏うか…。Antaeusはパリ出身で、NSBMもやらないし、クリシェに満ちた'スカンジナビアン・ブラックメタル'でもないから、どこにも属さないってことになるかな。とはいえ、シーンに迎合しようって気もさらさらないけど。」と語っている 。Deathspell Omegaのように前衛的な手法をとっているバンドも多く存在する。不協和音を取り入れていることが特徴で、他にはAntaeus、Aosothなどが著名である。 ドイツのシーンではアブサードの行いが論争を呼んだ。1993年、アブサードのメンバーが同じ学校に在籍する「ザンドロ・ベイヤーという少年を殺害」したのである。ベイヤーの墓碑の写真はリリースされたデモの一つThuringian Pagan Madnessのアートワークにナチズムを賛美する言葉とともに掲載されている。このデモは獄中で録音され、ポーランドでグレイヴランドのドラマーによってリリースされている。Nagelfarの中心人物であるAlexander von Meilenwaldはこのドイツシーンの最重要作品としてUngod、Tha-Norr、Lunar Aurora、KatharsisのデビューアルバムとDesasterのデモLost in the Agesを挙げ、「必ずしもドイツ史上最高の作品だとは言えないかもしれないが、全部すばらしい出来だ」と述べている。 それからもブラックメタルは脈々と受け継がれ、現在ではノルウェーを中心とした本場スカンディナヴィア地方以外にも、フランスやドイツ、ウクライナをはじめとするヨーロッパ、南米、北米、東アジア、東南アジア、オーストラリアなど世界各地でシーンが築かれると同時に、ディム・ボルギルらのようにメジャーレーベルでの商業的成功を収めるバンドも現れている。
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