社会福祉政策と景気刺激策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/04/30 08:16 UTC 版)
「ヴァルター・オイケン」の記事における「社会福祉政策と景気刺激策」の解説
カール・ゲオルク・ツィン(ドイツ語版)の見解によると、アルフレート・ミュラー=アルマックは「社会福祉政策と国家の景気刺激策・構造政策にオイケンよりも極めて高い比重を置いた。オイケンにとって、社会福祉政策は、せいぜい「極端な苦境に対する最小措置」として必要であるに過ぎず、景気刺激策は、全く無駄であり、有害であるとすら考えていた。なぜなら、市場経済は理念的には、彼が秩序理論で考えていたように、景気・不景気を循環することなどないだろうからである。このテーゼはオイケンの考えの論理的帰結から生じた。それによると、市場のプロセスから内因性のものとして説明可能な景気循環は起こらないであろう。それゆえ、彼はすべての景気理論を不充分なものとして棄却した。ヴァルター・オイケンは、歴史学派の 代表者たちに対して、あらゆる具体的な経済状況は、一回限りの性質(Natur)に属すると認めた。それにも関わらず、彼は可能な限り、一般的に妥当する法則性を経済領域において確認することを支持した。なぜなら、現実はいつでも、経済的行為のいくつかの根本要素がひとつにミックスされることで存在してい るからであり、この混合において一回限りであるからである。 新自由主義は 社会問題を疎かにしているという広く流布した偏見は、オイケンにも該当しない。オイケンによれば、19世紀に工業化 (Industrialisierung)が導入され、社会福祉的な困難が生じていたとき、確かに自由な秩序という理念は、労働者に事実上自由をもたらさなかったという点で、抵抗にあった。しかしながら重要なのは、困窮は労働市場における需要の独占によって生じたのであり、カール・マルクスが 主張したように、工業化が進むなかで労働者が、生産手段の所有権を失ったからではない。19世紀半ば以来、労働者の状況が本質的に改善されたが、これは、 生産手段の所有権が労働者のもとに戻ってきたからではなくて、機械化が進展したことで労働の生産性が上昇したからであり、労働市場における需要の独占をさ らに改善することができたからである。社会福祉問題の改善は、私的所有権の廃止にあると考えてはならない。私有財産は確かに苦境を生み出しうるが、共有財 産も問題を生み出す。集産主義は、確かに失業を回避できるが、個人を不安定にするという重大な危険を引き起こすのであり、それに対して流通経済(市場経済)は、人々に経済的安定性を保証する。オイケンによれば、社会福祉政策は必要である。しかしそれは市場を失効させるようなことであってはならない。むしろ社会福祉政策は、秩序政策のなかに存在する。つまり、一面的な独占的権力を崩壊させ、物質財を企業と家計、雇用者と被雇用者のあいだで調和のとれたかた ち分配できるようによる競争である。 オイケンの考えでは、経済政策は、高い雇用率を維持することへの責任が含まれている。失業、事故保険、健康保険、老齢年金のような社会保障が必要であるということには異論はない。 しかし、競争政策以上に、「特別な社会福祉政策」によって、「隙間を埋め、硬直を和らげる予防措置」が必要であると彼は考えた。とくに「労働市場憲法(Arbeitsmarktverfassung)」に対しては、国家が動く必要性があるとオイケンは見ていた。なぜなら「労働は商品ではない」からであり、商品市場と労働市場には「注意されるべき」違いがある。「労働者保護策」は、困窮を除去するために必要である。国家の施策だけでなく、労働組合にも「労働者の立場を改善する」のに値する。独占的な状況にある組織であろうと、労働組合は「企業の独占的な優位によって登場しなければならない」。
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