石油利権

石油/天然ガス用語辞典

石油利権

読み方： せきゆりけん
【英】: oil concession

利権とは一般に、国家や君主から授与された経済的特権として定義されている。石油利権といえば、石油を採掘・取得する特権ということで、広義には鉱業法に基づいて付与される石油鉱業権なども含まれると解することもできるが、一般には先進国内で法律に基づいて与えられている石油鉱業権を石油利権ということはなく、発展途上国において外国石油会社が取得した石油開発権を石油利権と呼びならわしているようである。 しかし最近約 20 年の間に石油鉱業権を国有化し、PS 契約またはサービス契約によって外国石油会社に操業ををゆだねている国々は、これをコンセッション（concession）と呼ばれることを拒否している。したがって石油利権とは石油利権契約（concession agreement）に基づく石油探鉱・開発権であるとすべきである。今世紀初頭から 1950 年代～ 60 年代前半にかけて、中東を中心とする産油発展途上国では外国石油会社は石油利権契約という形で石油探鉱・開発権を得るのが通例であった。イランの石油利権（1901 年）、イラク石油（1925 年）、 Aramco（1933 年）、クウェート石油（1934 年）などの利権協定はその典型的な例であり、これら中近東地域における初期の利権はすべて国際石油会社が掌中に収めた。石油会社は、当初は生産量 1 トンあたり一定金額を、その後は生産物の一定量をロイヤルティとして納めることを条件に、国土のほぼ全域ともいえる広大な地域を対象とし、契約期間 99 年といった長期にわたり、また操業上一切の規制なども受けることなく石油の探鉱、開発、生産および生産物の処分に関する独占的な権利を付与され、国家の中の国家として石油事業を中心にそれに付帯するあらゆる経済活動分野で広範な権利を掌中に収めた。しかし前近代的な利権として特徴づけられるこの利権協定は、産油国が自立を指向し、経済的基盤を石油操業に求めるようになるとともに、ロイヤルティの引き上げ、所得税思想を導入（ 1948 年ベネズエラ、1950 年サウジアラビア）した利益折半、鉱区レンタル、最低探鉱義務、鉱区放棄義務、課税基準価格の導入、ロイヤルティと所得税の分離（ロイヤルティ経費化）などの条件改訂が相次いで行われ、産油国側の取り分（政府取り分）増加と石油操業に対する産油国の監督の強化が図られた。この間、1938 年にメキシコ、1951 年にイランの石油国有化による利権の接収があり、1960 年には石油輸出国機構（OPEC）が結成された。国連では発展途上国の資源開発に関して、1962 年、66 年、70 年と 3 度にわたり、いわゆる「天然資源に関する恒久主権宣言」の決議が行われ、 OPEC は 1968 年の総会で決議した共通政策の 10 原則において、自主開発ないし事業参加をうたい、1968 年にはアルジェリアが 100 ％国有化を実行、1971 年にはリビアで部分的な石油利権の接収があり、1972 年にはサウジアラビアを中心とする中東産油国と利権を保有する国際石油会社との交渉の末、25 ％から 5 年後に 51 ％に至る事業参加（事実上の接収）協定が調印された。その後石油危機の発生で OPEC の気勢の盛り上がりに乗じてイラクでは国有化、クウェート、サウジアラビア、カタールでは 60 ％、次いで 100 ％の事業参加、カタール、中立地帯は 60 ％事業参加が実現した。また利権条件はロイヤルティ 20 ％、所得税率は 85 ％となった。