状況的原因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/26 22:24 UTC 版)
学業不正は、学生個人の人間性より大学での環境や社会的環境との関係が大きい。この状況的原因は特定するには幅広すぎて、教員には試験前にどんな措置をしておけば良いのかを絞りにくい。 受験者の席を離すのはカンニング防止にはほとんど効果がない。カンニングすると退学だぞと試験前に学生を脅すのは、かえってカンニングを増やすという報告がある。実際、試験監督官を増やしても、カンニングを見つける他の方法を導入しも、大きな効果はなかった。 米国の大学生の調査によれば、ここ半年間に1回でもカンニングした学生は50%で、5回以上した学生が7%、一方、カンニングした学生の2.5%だけがつかまった。教員が新しいカンニング防止法を導入すると、学生は、それを凌ぐより精巧な方法を工夫する。教員と学生のイタチごっこで、あたかもゲームのようだ。一部の教員は、コストがかかる割に難攻不落なので、軍備拡張競争と表現している。 教員の視点と学生の視点が大きく異なる。罰を厳しくしてもカンニングは減らない。罰を厳しくしてもカンニングはカンニングだと学生は受け取っていて、自分のカンニングは見つからないから罰を厳しくしても関係ないと学生は考えている。 しかし、教員が授業・シラバス・試験前に「カンニングをする学生にはとても失望している」と伝えることで、カンニングは12%減少した。 大学外の人から見れば、大学教授は論文出版数と獲得した研究助成金額で評価され、学生をどう教育したかでは評価されない。だから、かなりの大学教授はカンニングの増減に興味がない。 教員は偶然、カンニングを増やすこともする。厳しい教員や不公平な教員に仕返しするために学生がカンニングをするのである。また、教員が相対評価方法で成績をつける場合、学生同士で競争している学生のカンニング率は高くなる。 学生の目標設定とカンリング率が関係しているという研究報告がある。目標を高いところに設定したクラスは、目標の達成だけを強調するクラスに比べカンニング率が低い。言いかえると、知識や論理を学ぶのが面白いから学習する教育本来の価値を求める学生は、進級や報酬(見返り)のために学習する学生よりはカンニングをしない。 学業不正の最も重要な状況的原因は、多くの場合、個々の教員の管轄外である。 非常に重要な1つの要因は学生の時間管理(Time management)である。ある調査によると、教員の3分の2は、カンニングの原因は学生の時間管理のまずさに起因していると思っている。というのは、課外活動とカンニングに強い相関があるからでもある。特にスポーツ選手(学内だけのチームでも)のカンニング率が高い。また、学生がトランプ、テレビ、友達との飲酒に多く過ごせば過ごすほど、カンニング率が顕著に上昇する。関連して、学生社交クラブ会員の学生は学業不正率が高い。 学業不正の重要な他の原因は、その学生の仲間の倫理観である。すなわち、同調圧力である。心理学によると、人々はピアグループ(同年齢集団)の規範(掟)に従う傾向が強い。掟には学業不正をどうするかも含まれている。仲間がカンニングを嫌うならその学生もカンニングをしない。仲間がカンニングをするならその学生もカンニングをする。確かに、多数の研究報告は、学生がカンニングをするかどうかの決定的要因はその学生の仲間の学業不正に対する行動価値観だとしている。例えば、学業不正に無頓着なコミュニティーの大学生は平均69%カンニングをしたが、学業不正を嫌うコミュニティーの大学生はわずか約23%しかカンニングをしなかった。 しかし、同調圧力は両刃の剣である。他の仲間がカンニングするのを見た学生の41%がカンニングをする。だから、同調圧力を利用して規範を守らせる学生コミュニティー(同年齢集団)を作れると良い。例えば、大規模大学は小規模大学より通常、カンニング率は高い。これをどうするか? 大規模大学は、学生コミュニティー同士はほとんど互いに社会的圧力をほとんどかけないが、多数の学生コミュニティーに分かれている。学生コミュニティーのなかの結束は弱い。多くの教授は、小さなクラスほどカンニングをしないと主張している。大規模大学でも1つ1つの学生コミュニティーは小さいので、規範を守る学生コミュニティー多く作る。「結束は弱い」面を改善して、各コミュニティー内の同調圧力を利用し、倫理観を高めると良い。
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