状況証拠の有効性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/29 05:55 UTC 版)
よくある誤解の一つに、状況証拠は直接証拠よりも有効性が低く、重要性も低いというものがある。これは、一面では真実である。すなわち、直接証拠は、通常、最も強力であると考えられている。しかし、刑事訴追の成功例では、大部分をあるいは完全に間接事実に依存した例が多いし、民事訴訟の提起も、状況証拠ないしは間接証拠に基づいていることが頻繁にある。 現に、あらゆる事案で可能な限り強力な証拠を意味する、広く用いられる比喩―「煙る銃」(銃撃されて死んだ被害者がおり、被害者が銃撃された直後に、ある者が硝煙を上げている銃を持っていたのなら、その者が犯人であるという意味)―は、状況証拠に基づく証明の一例である。同様に、証拠の指紋、ビデオテープ、録音、写真及びその他の多くの物証であって、推論を引き出す根拠となるもの、即ち状況証拠は、非常に強力な証拠と見なされることがある。 実務では、状況証拠は、互いに整合し補強し合う複数の情報源に由来することがあり得るという点で、直接証拠に勝ることがある。目撃証言は時として不正確であり、偽証その他の誤った証言に基づいて有罪とされた者も多い。故に、強力な状況証拠は評決のためにより信頼し得る基礎を提供することができる。状況証拠からの認定を基礎付けるためには、通常、これを発見した警察官やこれを解説する専門家といった承認が必要となる。この証人は、「スポンサー」ないしは「認証証人」としても知られ、直接証言(目撃証言)を与えるとともに、目撃者と同様に、信頼性が問題となることがある。 目撃証言は、信用し難いことがしばしばあり、紛争や精妙な虚構の対象となることもしばしばある。例えば、タイタニック号は700名近い目撃者がいる中で沈没したにもかかわらず、長年の間、沈没前に船体が二つに割れたか否かをめぐって活発な議論があった。1985年9月に船体が発見されて初めて、真実が分かったのである。 もっとも、多くの場合には、同じ状況証拠の組み合わせから論理的には複数の結論が自然と引き出される。結論の一つが被告人の有罪を示すものであっても、結論のもう一つが被告人の無罪を示すものであるときは、「疑わしきは被告人の利益に」の原則が適用される。現に、状況証拠からは無実の可能性があると見えるときは、検察側はその可能性がないことを立証する責任を負う。
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