状況証拠の証明力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/29 05:55 UTC 版)
状況証拠の証明力が弱いという誤解は、広く存在している。定義から当然であるが、直接証拠が単体で要証事実を証明し得るのに対して、状況証拠は単体では要証事実を証明し得ないから、そのような誤解が生じるのも無理はない。報道機関が無罪判決に関して「状況証拠しかないのに、無理な見込み捜査が行われたのではないか。」と論評する例が多いことも影響している。複数の状況証拠が互いに補強し合って初めて、それぞれから引き出される結論が裏付けられることもある。これとともに、このような状況証拠は、ある特定の推論を他の推論よりも強力に支持することができる。ひとたび代替となる説明が排除されれば、状況証拠を含む説明は、より一層もっともらしいものとなる。 状況証拠があるとき、事実認定者はある事実が存在したと推論することが可能となる。刑事法では、事実認定者は(有罪である、あるいは無罪であるといった)主張が真実であることを支持するために、推論を行う。 合理的な疑いは、状況証拠と結びつく。というのも、状況証拠は推論に依存する証拠であることから、合理的な疑いという基準が設けられることによって、刑事事件であれ、民事事件であれ、ある者を有責と判断することが公正といえるためには、その者に不利益な状況証拠が十分に揃っていることが必要となるのである。合理的な疑いは、法廷で用いられる最高水準の証明であると言われる。合理的な疑いは、法廷で使用される最高水準の証拠として説明されており、陪審員が道徳的な確からしさをもって被告人が犯罪について有罪であることを見出すことを意味する。それ故、ある者に不利益な状況証拠が十分ではないとしても、その状況証拠が当該事案に関連してなされる別の判断に貢献することもあり得る。 専門家証人が提供する法科学的証拠は、状況証拠として取り扱われるのが通常である。例えば、法科学者は被害者を殺害した銃弾を被告人の銃器が発射したことを裏付ける弾道学的検査の結果を提供することがあるが、その銃撃を被告人が行ったとは必ずしも言えない。 状況証拠は、民事事件でも刑事事件でも、直接証拠がないときに特に重要になる。
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