物・産とは? わかりやすく解説

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ぶっ‐さん【物産】

読み方:ぶっさん

その土地から産出する品物産物。「郷土の—」「—展」


物産学

(物・産 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/04 17:54 UTC 版)

平賀源内『物類品隲』
源内が開催した物産会の展示品を紹介した書物。

物産学(ぶっさんがく)は、江戸時代後期に本草学から派生した分野で、各地の有用な産物(農作物動植物鉱物人工物)をあつかう学問[1]博物学に近い。物産産物之学などともいう[2][3]

解説

白井光太郎によれば、西洋の「博物学」と重なる東洋の学問として「本草学」「名物学」「物産学」があった[4][5]

本草学は、医薬の材料となる産物をあつかう学問である。江戸後期に本草学が発達すると、医薬に限らず有用な産物をあつかうようになり、物産学が形成された[6]。物産学の内容は、本草学の内容に、用途や産地、生産法(飼育栽培法)などの知識を合わせたものだった[3]。物産学は本草学だけでなく地誌学商品学[7][4]農学[8]園芸学[9]古典園芸植物)などとも重なる。

物産学書の例として、貝原益軒筑前国続風土記』所収『筑前土産考』をはじめ[10]平賀源内『物類品隲』[11][12]稲生若水丹羽正伯庶物類纂[12]小野蘭山『本草綱目啓蒙』[12][13]曽占春『海内方物紀略』[10]源伴存(畔田翠山)『和州吉野郡群山記』、木村蒹葭堂『日本山海名産図会』[14]、平瀬徹斎『日本山海名物図会』[14]大原東野『五畿内産物図会』[14]、ほか各地の「産物志[15][16]や採薬記がある[15]

田村藍水(源内の師)ら江戸の本草学者の学風が物産学的・実学的だったのに対し、稲生若水京都上方)の本草学者は名物学的・文献学的だった、とも言われる[17]

物産学の興隆は、徳川吉宗の「享保の改革」における殖産興業政策と関わる[7][18]。吉宗は上記の『庶物類纂』編纂を支援したほか、諸国産物調査朝鮮人参サトウキビなど舶来品の国産化、救荒食物サツマイモの生産、小石川植物園の運営、植村政勝阿部将翁ら採薬使の活動、なども支援した[7][19][20][12][21]。当時の商品経済の発達も物産学の背景にあった[14]

「物産学」「産物之学」といった呼称が現れるのは江戸後期以降である[22]。ただし、物産学にあたる営為は古くからあり、『周礼』や地誌一般における産物の記述や[23][8]、中国現存最古の植物誌南方草木状中国語版』などがある[8]

幕末から明治初期には、蕃書調所大学南校に「物産所」や「物産局」が置かれ、伊藤圭介田中芳男が所属した[24]。田中芳男門下の河原田盛美琉球処分に際して著した『沖縄物産志』も、本草学・物産学の影響下に書かれた[25]文部省博物局は大学南校物産局を前身として、湯島聖堂博覧会などの博覧会博物館事業を担当した[26]

関連項目

脚注

  1. ^ 西村 1999, p. 132.
  2. ^ 島田 1971, p. 249.
  3. ^ a b 佐伯 1997, p. 89.
  4. ^ a b 上野 1986, p. 5f.
  5. ^ 青木正児『中華名物考』平凡社〈東洋文庫〉、1988年(原著1959年春秋社)。ISBN 4582804799 NDLJP:2933760。9頁。
  6. ^ 矢部一郎『物産学』 - コトバンク
  7. ^ a b c 西村 1999, p. 129.
  8. ^ a b c 島田 1971, p. 250.
  9. ^ 島田 1971, p. 252.
  10. ^ a b 島田 1971, p. 272.
  11. ^ 西村 1999, p. 144.
  12. ^ a b c d 佐伯 1997, p. 90.
  13. ^ 島田 1971, p. 278.
  14. ^ a b c d 日本山海名産図会』 - コトバンク
  15. ^ a b 島田 1971, p. 273-277.
  16. ^ 科学書院 / 享保・元文諸国産物帳集成・第1巻[加賀・能登・越中・越前]”. www.kagakushoin.com. 2025年3月19日閲覧。
  17. ^ 西村 1999, p. 133.
  18. ^ 上野 1986, p. 55.
  19. ^ 大場秀章 (1996年). “日本植物研究の歴史をさかのぼる —小石川植物園三百年の歩み—”. umdb.um.u-tokyo.ac.jp. Ouroboros 第2号 東京大学総合研究博物館ニュース. 2025年3月8日閲覧。
  20. ^ 橋本正明(木人子室)『本草学者という人々 江戸時代の物産会』2020年https://bokujinshi.info/bussan.htm2025年3月1日閲覧 
  21. ^ 島田 1971, p. 251.
  22. ^ 島田 1971, p. 249;271.
  23. ^ 西村 1999, p. 214.
  24. ^ 山本悠三「博物学者田中芳男研究 : 『殖産興業と博覧会・博物館』」『東京家政大学博物館紀要』22、2017年。 CRID 1050564288200475008。83f頁。
  25. ^ 河原田盛美 著、増田昭子 編、高江洲昌哉;中野泰;中林広一 校注『沖縄物産志 附・清国輸出日本水産図説』平凡社〈東洋文庫〉、2015年。ISBN 9784582808599。359頁。
  26. ^ 日外アソシエーツ 編『日本の図書館・博物館・美術館史事典 トピックス1871-2023』日外アソシエーツ、2024年。 ISBN 978-4816930072 1頁。

参考文献


物産

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/04 14:13 UTC 版)

阿城区」の記事における「物産」の解説

鉱物資源が豊富で、タングステンモリブデン、鉛、亜鉛大理石蛍石建築石材などがある。土産物にはニンニク黒豆果がある。

※この「物産」の解説は、「阿城区」の解説の一部です。
「物産」を含む「阿城区」の記事については、「阿城区」の概要を参照ください。

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