温室効果仮説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/06 16:50 UTC 版)
「暗い太陽のパラドックス」の記事における「温室効果仮説」の解説
パラドックスを解決する仮説の1つとして、地球の大気による温室効果が挙げられている。形成直後の地球の大気は現在よりも多くの温室効果ガスを含んでいた可能性がある。二酸化炭素の濃度は高かったと考えられ、過去の二酸化炭素分圧は最大で 1,000 kPa であったと推定されている。これは、過去の地球では二酸化炭素を有機炭素と酸素に変換する細菌型光合成が無かったからである。酸素と反応して二酸化炭素と水蒸気を生成する強力な温室効果ガスであるメタンもかつては多く存在した可能性があり、体積混合比は 10-4 (100 ppm) だったと予想される。 2009年に東京工業大学の上野雄一郎らの研究者グループは地質学的な硫黄同位体の研究に基づき、太古代の大気には硫化カルボニルが含まれていたという仮説を提示した。硫化カルボニルは効率的な温室効果ガスであり、これによる温室効果の増大を考慮に入れると、地球の凍結を回避することが出来ると推定された。 2013年には、30億から35億年前の熱水水晶中に包含された液体中での窒素とアルゴンの同位体解析を元にした研究が行われた。この研究では、古代の地球大気では二窒素は大気の熱収支に関して大きな役割は持っておらず、太古代の地球大気における二酸化炭素の分圧はおそらく0.7バールよりは低かったことが示唆された。過去の窒素の存在量は、二酸化炭素の温室効果を増幅して惑星を充分に温暖に保つには少な過ぎるということが示されている。しかし論文の著者の1人は、この研究での二酸化炭素分圧の推定値は過去の化石土壌に基づく推定とは異なる高い値になっており、さらなる研究が必要ではあるものの、この値は暗い太陽の下でも地球表面に液体の水を保つのに充分な温室効果を発生させる可能性があると述べている。さらに、2012年から2016年にかけての研究では、古代の溶岩中に捕獲された雨痕や気泡の解析に基づき、27億年前の大気圧は1.1バールよりも低く、おそらくは0.23バールよりも低かっただろうという結果を示している。 また2017年には、原始的なメタン菌がメタンを生成する過程を考慮した研究が行われており、原始的な細菌による異なる2種類の光合成過程が存在すれば、パラドックスを解決するのに充分な量のメタンが大気中に蓄積される場合があるという結果が得られている。 地球植物学者の Heinrich Walter らは、最初に大陸が形成された後の10億年間、非生物学的なタイプの炭素循環によって温度の負のフィードバックが発生すると主張した。大気中の二酸化炭素は液体の水に溶け、ケイ酸塩の風化によって生成された金属イオンと反応して炭酸塩化合物を生成する。氷河時代の間はこの循環は停止する。火山による炭素の放出によって温室効果が発生し、温暖化のサイクルが再びスタートすることになる。 スノーボールアース (全球凍結) 説によると、過去に何度か地球の海洋が完全に凍結した時期があったとされる。最も最近に起きたのは6億3000万年前だと考えられ、その後に新しい多細胞生物のカンブリア爆発が始まった。
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