海底の生物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/01 15:02 UTC 版)
HMSチャレンジャー探検航海の概要レポートでは、チャレンジャー海淵が初めて発見された時に採取されたサンプルからの放散虫が掲載されている 。これら(ナッセラリア目(英語版)とスプメラリア目(英語版))はエルンスト・ヘッケルによって書かれた「放散虫レポート」(1887年) にて報告されている。 1960年の潜航でトリエステの乗組員は、海底は珪藻土から成り、海底に横たわっている「ある種のヒラメ」を観察したことを記述した。 最後の水深測量を終える際、私は素晴らしいものを見た。靴底に似た、長さ約1フィート(30cm)、幅が約6インチ(15cm)のある種のヒラメが海底に横たわっているではないか。私が彼を見ると、頭の上にある彼の2つの丸い目が私たちを盗み見た 。 鉄の怪物 (トリエステ号)は、 彼の静かな領域に侵入していった。目?彼に目が要るのか?単に燐光を見るため?彼に浴びせた投光照明は、水深6000mを超えるこの超深海(hadal)領域に入る最初の光だった。この瞬間が、生物学者が何十年も求めてきた答えとなった。海の最深部に生命は存在しうるのか?出来た!それだけでなく、ここは紛れもなく真実なのだが、骨のない真骨類の魚であり、原始的なエイ上目や板鰓亜綱ではなかった。ええ、高度に進化した脊椎動物で、(進化の)時間軸でいえばヒトに非常に近いです。ゆっくり、とてもゆっくりと、このヒラメは泳ぎ去った。片方を泥にもう片方を水中に、海底伝いに動き、彼は暗闇へと消えた。とてもゆっくりと 、 恐らく海底では全てが遅く 、 ウォルシュと私は手を振った。 多くの海洋生物学者は現在、この真偽不明の目撃について懐疑的であり、その生物はナマコかもしれないと指摘されている。探査機かいこうに搭載のビデオカメラは、海底でナマコ、ウロコムシ(英語版)、ヨコエビを捉えており、日本のNHKが2017年8月27日、「DEEP OCEAN超深海/地球最深(フルデプス)への挑戦」でその映像を放映した。探査機ネーレウスは、長さ約3cmのゴカイ類(多足動物)を捉えた。 かいこうが採取した堆積物サンプルを分析したところ、10900 mので多数の単純生物が見つかった。同様の生命体が浅い海溝(7000m以上)と水深4000~6000mの深海層で存在することが知られているが、チャレンジャー海淵で発見された生命体には、より浅い生態系のそれとは異なる分類区別を示す可能性がありうる。 採集された生物の大半は、単純で柔らかい有孔虫(ナショナル・ジオグラフィックによると432種)であり、他の4種は複雑な種、多室のレプトハリシス属とレオファクス属である(どちらも有孔虫の一種)。標本の85%が有機の柔らかい殻を持つアログロミイダ(英語版)であり、これは有機壁の有孔虫の割合が5%から20%の範囲にある他の深海環境からの堆積で暮らす生物のサンプルと比べても稀である。圧力がかかった水中における炭酸カルシウムの高い溶解度のため、硬い石灰質の殻を持つ小さい生物は極端な深度で成長するのが困難であり、チャレンジャー海淵における柔らかい殻を持つ生物の偏重は、今よりもチャレンジャー海淵が浅かった頃の一般的な生物圏から生じたのかもしれない、と科学者たちは理論づけをしている。600万から900万年超の間、チャレンジャー海淵が現在の深さへと成長するにつれ、堆積物に存在する多くの種が死滅したか、水圧上昇と環境の変化に適応できなくなった。深さの変化でも生き残った種が、チャレンジャー海淵の現在の生息生物の祖先と言えるのかもしれない。 2013年3月17日、研究者らは、微生物の生命形態がチャレンジャー海淵で繁栄することを示唆するデータを報告した。他の研究者らは、米国北西部海岸の海底8500フィート(約2591m)から1900フィート(579m)までの岩石内部で微生物が増殖するという関連研究を報告している。ある研究者によれば、「どこでも微生物は発見できる。彼らは状況への適応が極端で、どんな場所でも生き延びる。」
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