流言の拡散と検証、収束
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 17:40 UTC 版)
「関東大震災」の記事における「流言の拡散と検証、収束」の解説
一方で震災発生後、内務省警保局、警視庁は朝鮮人が放火し暴れているという旨の通達を出していた。具体的には、戒厳令を受けて警保局(局長・後藤文夫)が各地方長官に向けて以下の内容の警報を打電した。 「 東京付近の震災を利用し、朝鮮人は各地に放火し、不逞の目的を遂行せんとし、現に東京市内に於て爆弾を所持し、石油を注ぎて放火するものあり。既に東京府下には一部戒厳令を施行したるが故に、各地に於て充分周密なる視察を加え、朝鮮人の行動に対しては厳密なる取締を加えられたし 」 さらに警視庁からも戒厳司令部宛に 「 鮮人中不逞の挙について放火その他凶暴なる行為に出(いず)る者ありて、現に淀橋・大塚等に於て検挙したる向きあり。この際これら鮮人に対する取締りを厳にして警戒上違算無きを期せられたし 」 と“朝鮮人による火薬庫放火計画”なるものが伝えられた。また警視庁は「デマをばら撒くことは処罰される」というビラを貼り付けた。 当時はテレビはむろん、ラジオも日本にはなく新聞のみが唯一のマスメディアだった。記事の中には「内朝鮮人が暴徒化した」「井戸に毒を入れ、また放火して回っている」というものもあった。こうした報道の数々が9月2日から9月6日にかけ、大阪朝日新聞・東京日日新聞・河北新聞で報じられている。大阪朝日新聞においては、9月3日付朝刊で「何の窮民か 凶器を携えて暴行 横浜八王子物騒との情報」の見出しで「横浜地方ではこの機に乗ずる不逞鮮人に対する警戒頗る厳重を極むとの情報が来た」とし、3日夕刊(4日付)では「各地でも警戒されたし 警保局から各所へ無電」の見出しで「不逞鮮人の一派は随所に蜂起せんとするの模様あり・・・」と警保局による打電内容を、3日号外では東朝(東京朝日新聞)社員甲府特電で「朝鮮人の暴徒が起つて横濱、神奈川を經て八王子に向つて盛んに火を放ちつつあるのを見た」との記者目撃情報が掲載されている。また、相当数の民衆によってこれらの不確かな情報が伝播された。海軍無線電信所船橋送信所は流言をそのまま伝えたため、後日、所長の大森大尉は免職になったという。 これらの情報の信憑性については2日以降、官憲や軍内部において疑念が生じ始めた。2日に届いた一報に関しては第一師団(東京南部担当)が検証したところ虚報だと判明、3日早朝には流言にすぎないとの告知宣伝文を市内に貼って回っている。5日になり、見解の統一の必要性に迫られた官憲内部で精査のうえ、戒厳司令部公表との通達において 「 不逞鮮人については三々五々群を成して放火を遂行、また未遂の事件もなきにあらずも、既に軍隊の警備が完成に近づきつつあれば、最早決して恐るる所はない。出所不明の無暗の流言蜚語に迷はされて、軽挙妄動をなすが如きは考慮するが肝要であろう 」 と発表。「朝鮮人暴動」の存在を肯定するも流言が含まれる旨の発表が行われた。
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