汚物処理方式の展開
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 08:53 UTC 版)
汚物処理方式の本命となったのは循環式で、汚物タンクに水と薬剤の混合液が入っており、この液が便器の洗浄液としてフィルターを通してポンプにより循環する方式である。すでにそれ以前の1950年代後期から旅客機に用いられていたが、国鉄で1966年以降試作・研究が進められ、長期間にわたって汚物抜き取りをせずに済むことから、1970年代以降の主流となった。この循環式は硫酸銅系の薬剤を用いるため、洗浄水は青色を帯び、悪臭抑制のための特有の芳香がつけられている。また再利用した水分には大便や便紙に起因する固形物が含まれ、従来の陶器製便器では流水管内面の凹凸に付着して詰まりの原因となるため、それより詰まりにくいステンレス鋼製便器や、改良された陶器製便器が用いられるようになった。また1990年代以降、銀色無塗装のステンレス製便器の外観的な冷たさを避けるため、表面に色付き樹脂被覆を施した便器も登場した。FRP製の便器や、簡易水洗式便所に用いられているピストル式洗浄方式を採用しているタイプもある。 一部には、簡易水洗式便所に用いられているようなフラップ弁を設けて、便槽からの臭気の逆流を防止しているタイプもある。 さらに1990年代以降、やはり航空機の便所で用いられていた真空式が導入された。便器内の排水弁を一瞬開いた後、圧縮空気の力で汚物を吸引して汚物タンクに収める方式で、洗浄水は便器を洗浄する最小限の量で済ませるものである。1回の便器の洗浄に使用する水の使用量は180cc程度で、使用された圧縮空気は脱臭フィルターを通して排気管から排出される。 構造上、排水弁周りが複雑となるほか、洗浄水量が少なく稼動中に汚損が発生する、循環式と異なり洗浄水の循環使用ができない、不完全洗浄による臭気の発生もみられるなどの短所もあるが、汚物タンクの小型化が可能で設置場所も便所の真下でなくても良いなど、循環式よりも構造設計の自由度が高いことから急速に広まっている。家庭用の水洗式便所と簡易水洗式便所を組み合わせたような構造とし、少量の水を予め溜めておき、洗浄スイッチ操作時に底面のフラップ弁が開いて汚物を吸引し、便槽臭気の低減を図っている。洗浄水には水道水などの無臭タイプが用いられており、循環式のような特有の芳香は発生しない。登場初期は流水部分も含めてテフロン加工を施したFRP製が主流だったが、流れきらない汚物の発生への対策として、流水部分に鏡面加工を施したステンレス鋼を使用したタイプの採用もある。 他にも、水分のみ浄化・消毒して排出し、固形分を使い捨ての回収箱に収納されているカートリッジ状のフィルターに貯めて、抜き取りの際に脱着し、その後焼却処分する浄化排水式(カセット式)もあり、JR西日本の快速・普通用車両で一部を除き多数採用されている。地上側の処理設備が循環式と比べて簡素化出来る利点がある。またカセット式類似だが、固形分は電車床下で電熱焼却処分する方式などが一部で用いられている。いずれも浄化装置は家庭用浄化槽並みの性能を持ち、排水は車外に排出するが、それは飲用可能なレベルにまで浄化されている。
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