民主党内の動き(2000年)
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「青少年有害社会環境対策基本法案」の記事における「民主党内の動き(2000年)」の解説
2000年(平成12年)から2004年(平成16年)にかけての青環法案が従来の「中央立法」と違った点は、与党自民党だけでなく野党の民主党も同様の規制法案を準備した点にある。民主党案の内容に関しては後述するので、ここでは民主党内の動きについて見る。 2000年(平成12年)10月12日、民主党に「有害情報から子どもを守るための基本法制定プロジェクト・チーム」が設置された。座長に肥田美代子(2005年に政界から引退)、副座長に藤村修(2013年に政界から引退)ら6人、事務局長に水島広子(栃木1区、PTA事務局長、精神科医)、総責任者に石毛鍈子が就いた。 プロジェクト・チーム設置を主導したのは水島である。水島は、「有害」情報の規制を公約に掲げて2000年の衆議院選挙で初当選したばかりだった。民主党の首脳部は、議員1年生にすぎない水島を国会の代表質問に抜擢するほど目をかけていた。その時の水島の代表質問(第149回国会衆議院本会議7月31日)は以下のようなものだった。 (前略)モラルの低下の一つの例として、子供の目に触れるテレビや雑誌、ゲームなどの影響も無視できません。だれでも簡単に目にするメディアに暴力や性暴力がはんらんし、町じゅうに売春情報があふれているというのが今の大人の社会です。子供たちを批判する前に、総理御自身も含めて、私たち大人がまず反省すべきではないでしょうか。(拍手) 子供たちの問題行動とメディアによる有害情報の関係を指摘する専門家はたくさんいます。仮に犯罪に直結しなくても、幼いころから有害情報に当たり前のように触れることが子供たちの精神面の発育に及ぼす影響は無視できません。諸外国でも進められているように、子供たちを有害な情報から守る法律を日本でも早急につくる必要があると思います。 これはもちろん、国家による検閲というような形をとるべきではありません。例えば、子供にとって有害な情報であるか否かを親が判断して選べるようなシステム、また、町中でも子供が有害情報に触れるのを防ぐような社会的なバリアをつくるなど、地域社会の大人たちが子供たちを守るようなシステムをつくるべきだと思います。子供を有害情報から守るための立法の必要性について、森総理はいかがお考えでしょうか。(後略) この水島の質問に対する森首相の答弁は以下のようなものである。 (前略)テレビや雑誌、ゲームなどの青少年を取り巻く環境について、暴力や性犯罪がはんらんしており、青少年にとって大きな問題であるとの御指摘でありますが、これらの問題は、申すまでもなく大人社会の責任であります。青少年を取り巻く社会環境の改善のため、社会が一体となった取り組みを進めることが極めて重要であると考えております。 また、子供たちを有害情報から守るための法律の早急な制定を促す御意見をいただきました。 私は、かねてから、少年非行対策は与野党対立案件にあらずと考えておりますが、御指摘の点については、まさに議員と意見を一にするものであります。しかしながら、この種法律の制定につきましては、青少年をめぐる環境の浄化の基本的なあり方や表現の自由とのかかわりなど、国民的な合意の形成が必要であると考えられ、関係方面の幅広い議論を重ねていきたいと考えております。(後略) このように、水島の質問は、従来から繰り返されてきた自民党の規制推進派と何ら変わりのない理屈によっていた。 その後、法案は「子ども有害情報からの子どもの保護に関する法律案骨子」としてまとめられた。しかしながら党内での議論は不十分で、プロジェクトチーム内でさえ自民党案・民主党案共に反対と表明する議員がいたにも関わらず、民主党は法案を了承した。同年12月21日、記者会見が開かれ骨子が公表された。会見に臨んだのは水島と石毛である。 しかし、この後民主党案に関する動きは途絶え、法案の提出にはいたらなかった。
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