正式な刑としての性器切断
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/19 05:03 UTC 版)
「性器切断」の記事における「正式な刑としての性器切断」の解説
刑罰としての男性器の切断は、身体刑としての切断部位がたまたま男性器であった場合、性犯罪の報復刑または予防刑としての性格を持つ場合、連座刑として、子孫を絶つ目的で行われる場合がある。 性犯罪の予防としての去勢刑は、被告人による懲役刑との任意の選択として、現在でもアメリカ合衆国の一部の州で執行されており、多くは薬物注射による去勢であるが、テキサス州では、手術による、睾丸切除も認められている。最近の執行例としては、1997年と2007年に行われている。 同じく、女性の性犯罪や姦通罪の予防として、女性器割礼がアフリカの一部で行われている。女性器割礼は様々な目的があるが、夫以外の者との性行為が性犯罪のように強い非難を浴びる地域では、ある種性犯罪の予防としての側面も有する。クリトリスを切除し、大陰唇を糸で結びつけ性行為ができないようにするケースもある。 刑の執行は、切断方法によっても大きく3種類に分類され、睾丸を除去し去勢する方法、陰茎を切断する方法、そしてその両方を伴うものがある。もっとも、これらの刑が強制的に実施されることは、先進国ではない。先進国で強制的に行われるのは、もっぱら、ホルモン注射のみである。このホルモン注射ですら、受刑者の希望がなければ、できないとされる国もあるほど、去勢刑に対しては、先進国では強い非難を浴びている。 一般によく知られている中国の宮刑は、両方とも除去した「完全去勢」がほとんどであった。中国で宮刑を受けた人物では司馬遷が有名である。また15世紀のアフリカ大陸のモシ族の宦官は、陰茎のみ切断される「羅切刑」を受けた罪人出身者であった。 陰茎に血液を供給する動脈には陰茎背動脈、海綿体動脈、球部動脈、尿道動脈があるが、羅切刑では、切断部位によってはこれら全てが切断される。順流で血圧の高い動脈からの出血を止められないと死に至る(陰茎には静脈洞である海綿体があるが、血圧の低い静脈からの逆流を止血するのは動脈より容易)。うまく止血できたとしても、傷口から入った細菌により感染症で死亡することもある。失血死や感染症による死亡は、睾丸摘除においても同様に起こり得る。 女性器切除も、劣悪な環境で行われることが多く、感染症による死亡例は後を絶たない。 また、宦官手術の際、術中術後の尿道確保は必須であり、宦官への登用見込みのない受刑者の場合にはそうした処方がなされないことも少なくなく、尿道閉鎖によって排尿不能となり、腎不全から死亡するケースもあった。このように、身体の一部を切断するこれらの刑罰には死の危険が伴っていた。 なお、中国では、古来から身体を無闇に傷付けることはもっとも非倫理的な行為であると考えられ、死後も家族の墓へ埋葬されることはなかった。また、去勢は子孫繁栄を不可能に到らしめるものであり、歴史の中では死刑よりも重い位置に置かれることもあった。特に重罪とされた場合には、主犯を死刑に処し、その家族らを宮刑とした。すなわち、事実上の「御家取潰し」である。 日本にも宮刑は存在した。「皇帝紀抄」によると、1207年に法然の弟子である法本坊行空と安楽坊遵西が、女犯の罪で羅切の刑に処せられたとの記録がある。また「後太平記」によると、「建武式目」には、男性のみならず女性への宮刑も定められていたという。
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