欧米でのネオナチ問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 22:49 UTC 版)
欧米諸国では極右、白人至上主義者によるテロが目立つ状態である。 1960年代後半から1970年代後半にかけて英国で出現した、白人至上主義者や反ユダヤ主義等の過激な民族主義より派生して生まれたネオナチ、「スキンヘッド」の問題は、欧米で根深い問題となっている。 2006年5月22日には、ドイツ東部のマクデブルクで韓国人学生がドイツ人青年に侮辱的言葉をかけられ暴行を受けたと韓国メディアが報じた。地元での報道では、加害者は韓国人学生に自転車をぶつけられたと主張していることを伝えている。 2000年代にはロシアのスキンヘッドによる中国人をはじめとするスラブ人以外の人種への襲撃事件が多発しており、特に4月20日のアドルフ・ヒトラーの誕生日前後の時期には日本側も注意報を出している。 2011年11月には、ドイツ東部チューリンゲン州を拠点にしている「国家社会主義地下組織(National Socialist Underground、NSU)」を名乗るネオナチの男女3人により、2000年から2007年までにトルコ系男性8人、ギリシャ系男性1人、ドイツ人女性警察官1人の計10人を連続殺人した容疑が発覚した。銀行強盗の容疑で追われていた男2人が自殺し、1人残った女性のベアテ・チェーペ(Beate Zschaepe)が自首し、家宅捜索したことで発覚した。ネオナチを名乗るグループの大規模連続殺人が明るみに出たのは初であり、メルケルドイツ首相は「ドイツの恥だ」と非難した。その後、2013年5月6日に、10人を殺害した連続殺人事件に関する裁判が開始された。この事件に関連して、ドイツ内務省傘下の情報機関である連邦憲法擁護庁(BfV)の要員が事件関連のファイルを破棄していたことが発覚し、ハインツ・フロム(Heinz Fromm)長官が引責辞任するなど、治安当局と極右勢力の間に密接な繋がりがあるのではないかとの疑念が渦巻いている。 2015年以降よりドイツでは多くのシリア難民が流入した事により活発となっている。国際反テロセンターによると、ドイツでは2016年だけで極右による暴力事件が1600件にのぼり、このうち放火が113件、火炎ビンなど爆発物を用いた事件が10件を占めた。ドイツの諜報機関、連邦憲法擁護庁(BfV)によると、昨年段階でドイツ国内には2万4100人の右翼活動家がおり、そのうち1万2700人は「暴力的」と報告されている。2018年に当局は1000丁以上の銃器を極右活動家から没収したが、極右の過激化は収まっておらず、移民やその権利を擁護する政治家などを標的にした「死のリスト」も作成されている。ドイツ東部では「ドイツ人同士の格差や差別を解消するために」という民族の一体性を強調し、異なる形で国家による救済を望み、武器を購入する市民が増加するという極右化と、ネオナチ団体の台頭が指摘されている。 日本の公安調査庁や国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)等は、「欧米諸国で高まる極右過激主義者の脅威」として、過激なナショナリズムを推進するネオナチ思想を有する欧米の組織や政府機関等を危険視している。
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