林業被害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/11/25 04:07 UTC 版)
キバチには枯れている木に産卵するものもあるが、ノクチリオキバチは生きているマツを加害する。本種はその数が少ない時は被圧木や傷ついている木などストレスを受けて弱っている木に産卵する。オーストラリアの植林地では特に水分ストレスを受けている木に産卵することが分かっている。被害木の外観的な特徴としては葉が枯れていく。葉の色は濃い緑から薄い緑、黄色となり、最後は赤茶色になる。この間加害されてから3カ月から半年程度かかる。これはキバチが産卵時に注入するミューカスと共生菌によるものが大きい、2つの物質は樹木の細胞を殺し、その場所には乾燥が生じる。キバチは弱った木に群がって産卵するので、部分的に多数の乾燥した場所が生じ、それを共生菌の菌糸がつないでいく。結果として水を吸い上げられなくなり、枯死してしまう。また、共生菌とミューカスが樹木に有害なある種の毒素を作るという報告もある 。 マツの方もキバチに抵抗した結果、産卵場所に樹脂を分泌するようになる。樹脂に滴や垂れたものは幹の中間程度の高さで見られることが多い。しかし、本種、とくにキバチの共生菌に抵抗性のない樹種では樹脂の分泌が足りず枯死してしまうと考えられている。ニュージーランドではキバチの被害を受けていくうちに樹脂の量を増やし抵抗力を増した例が報告されている。 本種の被害は抵抗性のない北米原産のマツを植えた地域で顕著である。ニュージーランド、オーストラリア、ウルグアイ、アルゼンチン、ブラジル、南アフリカなどの南半球の国においてはマツの仲間は天然にはなく、海外からの輸入であり特に北米原産の種類が多かった。後にキバチはこれらの国侵入し、林業用などで植林されていたマツを加害した。特に植栽本数の多いラジアータパイン(Pinus radiata、モントレーマツとも)やテーダマツ(Pinus taeda)は著しい被害を出した。1950年代からのオーストラリアにおける大発生では、ラジアータパインが被害を受け酷いところでは80%もの木を枯らしたことはよく知られている。この他にもポンデローサマツ(Pinus ponderosa)などいくつかの種類もノクチリオキバチの加害に対して感受性が強いことが知られている。 アメリカでも本種の侵入が確認されている。船の積み荷にまぎれていたと考えられ、かつては港湾の付近に限定されたが、最近では港から離れた所でも見つかっておりその拡大が危惧されている。アメリカ政府が1996年から1998年の間に調査したところ、船荷を保護する梱包材に使われている木材から26種のキバチが見つかり、このうち1種が本種と同定された。 日本においては今のところ侵入はしていないとされるが、侵入・定着が特に警戒されている林業害虫の一つである。アメリカ同様、港湾等からの侵入が考えられており、丸太や船荷を保護する梱包材が危険だとされている。梱包材は港湾だけにとどまらず、各地の運送業者の物流センターに着くまで荷物と一緒に運ばれるため侵入後、速やかに各地に分散・定着してしまうことが懸念されている。 被害木。アルゼンチン。 薪の移動を控えるように呼び掛けるポスター。アメリカ。
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林業被害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/03/16 15:50 UTC 版)
本種は北半球において最も経済的に重大な影響をもたらす森林病原菌だとみなされている。これは本種が生きている針葉樹の根に寄生して心材を腐朽させてしまう木材腐朽菌であるためで、腐朽が進むことで材の価値を著しく下げてしまう。また、根元の腐朽が進んだ樹木は強風や冠雪で倒れやすく樹木にとって間接的な死因となる。アメリカにおいては各地の森林に分布しており、毎年多額の損失をもたらす。日本では特に北海道のトドマツ(Abies sachalinensis)やエゾマツ(Picea jezoensis)で被害が知られている。本種の起こす病害は根株の心材を腐朽させることから根株心腐病(英:butt rot)と呼ばれる。 病状は地下を中心に進行するために目につきにくく、子実体が生えてから気づいたり、腐って倒れて死んだあとに気付くこともある。子実体が目につくようになるのは感染後3年かかる。感染すると樹木は針葉の異常な成長や樹皮が淡い黄色みを帯びて、衰えて死ぬ。樹木の根に白色腐朽菌(white rot fungus)が見られるのは本種に侵されている可能性のある徴候である。病状が進むと樹皮の色が淡い黄色から錆びのような明るい茶色に変化していく。末期には本種の菌糸が出てきて白色に変わる他- 黒い斑点が列状に浮き出てくる。他にも地表と黒い列状の斑点の間に子実体が顔を出すことがある。
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