条例に対して指摘されている問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 09:52 UTC 版)
「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」の記事における「条例に対して指摘されている問題点」の解説
本条例は、条例の内容と条例の制定過程の両面から問題視されている。 条例の成立に至る過程で「科学的に証明されていない疾病の予防」、「通信の制限」、「経済的権利の妨害」、「パブリックコメントの隠蔽改竄」など、複数の問題点が指摘されている。また、弁護士の作花知志は日本国憲法で保障されている個人の自己決定権や幸福追求権、プライバシー権に対する不当な干渉であり、第13条に違反する可能性があると指摘している。 香川大学法学部の三野靖教授は「なぜこの条例を制定したのか、そしてなぜ(ゲーム利用の)時間制限なのか、なぜパブリックコメントは公にできないのか、説明できない中で採決したっていうことは極めて議会として無責任な対応だと思います」と述べている。 条例に賛成しなかった自民党議員会と共産党県議団、リベラル香川の3会派は、4月27日に条例が制定された過程の問題点を洗い出す必要があるとして検証委員会の設置を求める申し入れを行ったが、大山議長は申し入れに返答せずに4月30日に議長を退いた。後任の西川昭吾前副議長は、これ以上の議論の必要はなく、検証委員会を立ち上げる予定はないとしている。また、同じく後任の十河直副議長は検討委員会でのパブリックコメントの取り扱いについて「私のほうでは承知してないし、いつどのようにしてやったかも、実は勉強不足で、分かっておりません」と述べ、この発言に対して西川議長は、今回のパブリックコメントについては住民投票の様な形ではないため、慣例に倣って重視して話し合わなかったことを言っているという内容の答弁をしている。西川議長は5月22日の再度の申し入れの際には今後の条例制定の透明性を高めるための議論を「議会改革検討委員会」の中で行う方針を示したが、6月1日の会派連絡会で条例は済んだことであり議論が平行線を辿ることはわかりきっている改革検討委員会の設置は不要だとして方針を撤回し再び態度を翻した。6月22日に提示された回答書においても「条例は適正な手続きを経ていて、過程の検証や内容の見直しを行う必要はない」として検証委員会の設置を拒否し、これを受けて3会派は条例検討委員会の手続きを定めることなどを求めるため「議会改革検討委員会」の設置を西川議長に要請した。 5月25日、香川県弁護士会は、本条例が制定の根拠に欠け、憲法や児童の権利に関する条約に反する部分があるとして、条例の廃止および条例18条2項の削除を求める声明を公表した。声明の中で、「ネット・ゲーム依存症」を成人の薬物依存と同視する論拠が不明確であることや、ネット・ゲーム依存症が社会問題となっている社会的事実が見出せないこと、世界保健機関が定義するゲーム障害はゲーム行動ではないインターネット利用を対象とせず、「ネット・ゲーム依存症」と「ゲーム障害」の定義が一致しないため、インターネット依存を防止する根拠にならないとし、そもそも立法事実を欠いていると指摘している。これに対して、県側は「本条例の廃止および本条例18条2項の削除については、理由がない」との見解を示し、教育委員会や久里浜医療センターの独自調査を根拠に「臨床的に未成年者のゲーム依存が学力・体力・精神に悪影響を及ぼすあるいはその蓋然性が高い」と主張している。さらに、「保護者が子供の余暇の時間を制限することは保護者の責務として当然」「子供の学習権を実現する目的で一定の制約に服することがあるのは憲法上、当然の帰結」等の主張も述べている。 6月17日、高松市の個人から条例の廃止と制定過程の問題点を県民に説明することを求める陳情書が議会へ提出された。提出された陳情は条例の抜本的な見直しを求めるものと、不透明な制定過程の検証を求めるものの2件で、議会は多数決を取り、陳情をどちらも不採択とした。 2021年11月22日、条例の施行2年を前に、条例の内容について再検討を求める陳情が議会へ提出された。議会では共産党議員団、自民党議員会、かがわ立憲みらいの3会派16人を除く賛成多数でこれを不採択とした。
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