有効性の研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 15:11 UTC 版)
「ヒトパピローマウイルスワクチン」の記事における「有効性の研究」の解説
2013年の厚生労働省の資料では、ワクチンの予防効果はまだ明確には見出されていないとされるが、日本での解析では、ワクチン接種によって、子宮癌の年間累積罹患率を半減できるとする推計が出ており、また世界での解析モデルによる推測でも、子宮頚癌罹患と死亡を70-80%程減らすという結果が出ている。 2017頃より、非接種群と比較して、子宮頸癌の発癌率に差が出てきたことが報告され始めている。効果の判定を慎重にしているのは、予防効果を検出するには、大規模で長期間の試験が必要なためである。前癌病変であるCIN2については、2018年5月に感染予防を確認したとされる報告書が公開されている。 しかし前述のとおり、CIN2が癌へと進行する確率は低い。ランダム化比較試験のシステマティック・レビューでは、最長7年の研究を含む26研究から、子宮頸癌について評価するには十分な研究規模、また期間ではない。16型・18型に未感染であることを確認した15-26歳女性では、種類を問わず前癌病変が生じるリスクは、ワクチン接種群で10,000人中106人に病変があり、偽薬では287人であった。 感染不明では、同リスクは、ワクチン接種群で391人、偽薬では559人である。CIN2の指標は、診断の一致率の低さや、自然退行率が高いため、CIN2をワクチンの有効性を図る指標として使用することを疑問視する声もある。 宮城県での20-24歳の女性で、細胞診による異常が未接種で約5%、ワクチン接種群では約2.4%。秋田県での同じく未接種約2%、ワクチン接種群で0.24%。 2017年12月に大阪大学産婦人科などのOcean Studyが日本ワクチン学会で報告した中間解析では、16型と18型の感染を抑制したことで、あらゆる型を含めた感染率はワクチン接種群12.9%、対照群19.7%と差が見られたが(約35%減少)、細胞診の異常率には差がなかった。 2019年4月、英国エディンバラ大学のTim Palmerらは、1988-96年にスコットランドで生まれた女性を対象に、20歳時点の子宮頸部病変スクリーニング検査の結果を調べ、12-13歳時点でHPVワクチンの定期接種を受けた1995-96年生まれの女性では、ワクチンの接種機会がなかった1988年生まれの女性に比べ、グレード3以上の子宮頸部上皮異形成が89%減少していたと『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』で報告した。 2019年6月、「HPVワクチンの影響の共同研究(HPV Vaccination Impact Study Group)」が2014年から4年間の14カ国の研究を総評するレビューを『ランセット』誌に掲載し、このなかで子宮頸癌ワクチンの効果が明らかになったとした。 同レビューでは、ワクチン接種が始まる前と8年後を比べた際に、以下のような結果が出た。 16型と18型のHPV感染件数は、15-19歳の女性で83%、20-24歳の女性で66%減少 尖圭コンジローマの発症件数は、15-19歳の女性で67%、20-24歳の女性で54%減少 CIN2+(前癌病変である子宮頸部上皮内腫瘍)の発症件数は、15-19歳の女性で51%、20-24歳の女性で31%減少 ワクチンを受けていない15-19歳の男子の尖圭コンジローマ発症件数は50%近く減り、同じく30歳以上の女性の発症件数も大きく下がった。 より幅広い年齢層がHPVワクチンを接種し、接種率が高い国ほど、減少率は高かった。 共同著者のカナダ・ラヴァル大学Marc Brisson教授は「向こう10年で、20-30代の女性の子宮頸癌罹患率が下がっていくだろう」と指摘し、子宮頸癌撲滅の可能性にも触れた。英国・ジョーズ子宮頸癌基金(Jo's Cervical Cancer Trust)会長は「この研究は、ワクチンの効果を信じない人に対する反証をさらに強めるもので、とても勇気付けられる」と評した。BBCは「'Real-world' evidence(「現実世界」での証拠)と題して報じた。 2021年11月、医学誌「ランセット」に公費によるHPVワクチン接種プログラムを2008年9月から導入しているイギリスでは12-13歳でワクチン(2価ワクチン)を接種した学年は、子宮頸癌を87%減少させる報告が掲載された。
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