有効性に関する根拠の質と出版バイアスの問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 00:06 UTC 版)
「精神科の薬」の記事における「有効性に関する根拠の質と出版バイアスの問題」の解説
「根拠に基づく医療」、「ランダム化比較試験」、「メタアナリシス」、および「出版バイアス」も参照 有効性については、根拠に基づく医療(EBM)において、客観性の強いランダム化比較試験(RCT)の根拠の質が高いとみなされる。さらに複数のランダム化比較試験のデータを結合し分析するメタアナリシスが最も強い根拠である。個々のランダム化比較試験では、バイアス(偏り)がある可能性が残るためである。とりわけ、否定的な結果が出た場合に公開されないという出版バイアスが問題となっている。(#マーケティングによる干渉節も参照。) 出版バイアスを軽減する方法の一つに、情報公開法に基づいて、各国の規制機関から薬の認可のために提出された全データを入手し分析する手法がある。たとえば、アメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を得るためには、2つの肯定的な結果が出た試験が必要なだけで、有効性が示されるまで臨床試験の数をこなし、薬は承認されているが否定的な結果が出た試験は提出されたまま公開されていないため、情報公開法に基づいてこれらのデータを結合してメタアナリシスを行うと否定的な結果が示されることもある。つまり、本質的に薬を認可するための臨床試験そのものが、結果の良い試験だけの公開につながるというバイアスの下地となるわけである。 また、メタアナリシスは欧州で用いられる傾向があり、アメリカでは試験結果を結合してデータの分母を大きくするという形ではなく、強い資金力により大規模な試験そのものを行う傾向がある。つまり、以下のような違いである。アメリカ国立精神衛生研究所(NIMH)が出資した研究に、非常に大規模なランダム化比較試験があるのはそのためである。イギリスのコクラン共同計画は、定期的に各主題ごとのメタアナリシスを行い、システマティック・レビューとして公開している。 またさらに、ほとんど有効性の差が分からないような場合、試験に参加する患者数である分母を大きくすることでわずかながらの有効性の差が統計的に判明することになる。有効性の差が見出しにくい医薬品の認可を得るために、このような大規模な試験を行うことが高額な薬の開発費用につながり、研究資金の問題から研究開発の停滞につながっていった。
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