マーケティングによる干渉
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 00:06 UTC 版)
「精神科の薬」の記事における「マーケティングによる干渉」の解説
アメリカ合衆国の製薬産業は、食品産業や自動車産業を抜き、最も広告費を使う産業に成長した。アメリカでは、日常茶飯事となった適用外用途の使用を勧める、違法なマーケティングへの制裁が立て続けに起こり、それぞれが罰金の史上最高額を塗り替えている。 製薬会社が広告する試験の結果は、良い結果が出たものに限られる傾向がある。2003年から2010年にかけて、否定的な研究が公開されない出版バイアスの問題が取り沙汰された。2004年8月に、グラクソスミスクラインの抗うつ薬パロキセチン(商品名パキシル)の否定的な試験である、小児の自殺の危険性を高めるという試験結果を公表しなかったことなどによる裁判の結果、全試験結果を公表することで合意された。 2005年8月には、世界保健機関による国際的な臨床試験の登録制度であるICTRP(International Clinical Trials Registry Platform)の設立や、2007年FDA改正法(FDAAA)における登録の義務付け、同様に最初の被験者を募集する前に登録をするという、2008年の世界医師会によるヘルシンキ宣言改訂につながった。 ほかにも、出版バイアスを除外した有効性についてのメタアナリシスは、イギリスの診療ガイドラインに影響を与えた。英国国立医療技術評価機構(NICE)の2009年の改定されたうつ病に対する臨床ガイドラインは、軽症以下のうつ病に抗うつ薬を使用してはいけない(Do not use antidepressants)とした。 国連子どもの権利委員会は、注意欠陥多動性障害(ADHD)が、薬物治療によって治療されるべき疾患であるとみなされていることを懸念し、診断数の推移の監視や調査研究が製薬会社と独立して行われるようにと提言している。 日本では、医薬情報担当者(MR)の数が増え続けてきた背景があり、企業は売り上げの9割以上を処方箋医薬品に頼っている。そのためMRの接待による癒着が過剰を極め、交通費や宿泊費、飲食費を製薬会社が負担する会合に、高級クラブやゴルフ場での接待が行われるようになった。しかし2012年4月には、国際的にも癒着に厳しくなった情勢に鑑み、また患者が被る不利益や、公的な医療制度に頼る医薬品制度であることから、厳しい自主規制の策定に乗り出した。
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