有効性に否定的見解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/28 05:59 UTC 版)
「イベルメクチン」の記事における「有効性に否定的見解」の解説
in vitro(試験管内で)の試験では、イベルメクチンがCOVID-19に効果を持つことが示された。しかし、ヒトでもそのような効果を得るためには、大量投与する必要があり有害性を排除できない。2022年3月3日時点で、有効性はない可能性が高く、臨床試験以外では使用しないことが推奨されている。多くのランダム化比較試験(RCT)が軽症または中等症のCOVID-19患者を対象として実施されているが、大半はまだ査読されておらず、プレプリント(正式な論文として発表される前段階の草稿)の状態である。これらの研究は、「規模が小さい」「大半の研究が先進国以外で実施されている」「1回投与量や投与期間が様々である」「単独ではなく他の薬剤も同時に使用している」「盲検化(目隠し化)が徹底されていない」「被験者の重症度が明確ではない」などの問題があり、バイアスの除外が困難である。有効であるとしたメタアナリシス(複数の研究結果を統合して解析)では、対象とした論文の2/3は査読されていないプレプリントであること、解析対象となっていた死亡を著明に減少させた効果を示したプレプリントがデータ改ざんなどの疑いで撤回されたことなどから、結果の信頼性は低いとされている。 COVID-19のイベルメクチンに関する多くの研究には深刻な方法論的限界があり、証拠の確実性は非常に低くなっている。その結果、いくつかの組織は、COVID-19に対する有効性の証拠が弱いことを公に表明した。 アメリカ食品医薬品局(FDA)は、「COVID-19の治療や予防にイベルメクチンを使用すべきでない理由」というページをウェブサイトで公開している。アメリカ国立衛生研究所(NIH)のCOVID-19治療ガイドラインは、イベルメクチンの証拠が限られているため、その使用を推奨または反対することはできないと述べている。イギリスのCOVID-19治療諮問委員会(UK-CTAP)は、COVID-19治療としてのイベルメクチンのエビデンスに基づく理論と妥当性は、さらなる調査を進めるには不十分であると判断した。欧州医薬品庁(EMA)は、適切に設計された治験以外でのCOVID-19への使用を支持しないと述べた。 また世界保健機関(WHO)は、イベルメクチンがCOVID-19に効果があるという証拠が非常に不確実とし、治験以外では症状の内容や期間にかかわらず、いかなる患者にも使用すべきではないとの声明を発表した。 2021年2月、イベルメクチンを製造販売するMSD製薬(メルク)は、イベルメクチンがCOVID-19に効果があるという十分な根拠はなく、データ不足でCOVID-19患者への投与が安全かは分からないとの声明を発表した。MSD製薬は、イベルメクチンをCOVID19の治療薬として適応するための臨床試験は行わず、別の軽症者用飲み薬(モルヌピラビル)の開発を行っている。 同年7月、有効性の最大の根拠となっていた論文に捏造が発覚して撤回されたため、この論文を含んだメタアナリシスも撤回された。同月28日、コクランレビューは「現段階のエビデンス(科学的根拠)からは、COVID-19患者の入院・外来治療、およびハイリスク曝露後の感染予防に使用されるイベルメクチンの有効性と安全性については不確実」と結論付けた。
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