シュワー
(曖昧母音 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/30 15:08 UTC 版)
中舌中央母音 | |
---|---|
ə | |
IPA 番号 | 322 |
IPA 表記 | [ə] |
IPA 画像 | ![]() |
Unicode | U+0259 |
文字参照 | ə |
JIS X 0213 | 1-11-16 |
X-SAMPA | @ |
Kirshenbaum | @ |
音声サンプル |
シュワー(独: Schwa, シュヴァー)とは母音の一つ。記号 ə で表される。西洋諸語における曖昧母音の音素/ə/、または、音声の一つである中舌中央母音[ə]を指す。
中舌中央母音
中舌中央母音(なかじた・ちゅうおうぼいん)または中段中舌母音(ちゅうだん・なかじたぼいん)とは、中舌の中央母音を指す。舌の位置も口の開き具合も中間的な母音である。国際音声記号で [ə] と表される。
曖昧母音
曖昧母音(あいまいぼいん)としてのシュワーは、英語、ドイツ語、フランス語などの西洋語における、はっきりとした特徴のない中性的な母音をいう。音素表記では/ə/と書かれるが、中舌中央母音[ə]以外の音声で発音されることも多い。例えば英語では[ɘ][ə][ɜ] などの音で、フランス語では[ø]に近い音などでも発音される。
外国語における曖昧母音音素/ə/の発音を日本語で表記する場合、原則としてイ段以外の仮名を用いる。ただし、animation 「アニメーション」の最初の i など、イに近い音で発音される場合があるものは例外である(英語の綴りのうち強勢のない "i" には、[ɪ]と[ə] のいずれで発音してもよいものがあり、音素記号では /ɨ/ または /ə/ と表記される)。
由来
シュワーという名称は、ヘブライ語の文法用語における שוא (shva, sheva)に由来する。これは、ヘブライ語における軟母音(最短母音)をあらわす用語である。19世紀後半、ドイツのエドゥアルト・ジーファースが、このヘブライ語を元に„Schwa“というドイツ語の名前を、中性的母音(the neutral vowel)として初めて用いた[1][2]。
ə の記号は、ヨハン・アンドレアス・シュメラーが1821年に初めて短母音の意味で用いた[1]。
言語例
中舌中央母音としては以下のような例がある。
曖昧母音としては以下のような例がある。
英語におけるアクセントとの関係
英語において、単語の弱音節にある母音はしばしば曖昧化しシュワーとなる。 例えばバナナ(banana)の発音は[bə.ˈnæ.nə]。[3]
脚注
- ^ a b Laufer, Asher. "The origin of the IPA schwa." Proceedings of the 19th International Congress of Phonetic Sciences, Melbourne, Australia. Vol. 1911. 1908.
- ^ 神山孝夫『印欧祖語の母音組織―研究史要説と試論―』大学教育出版、2006年、96頁。ISBN 9784887307186。
- ^ “英単語の強調はストレスアクセントの位置・音節・曖昧母音(シュワ)の発音が要!”. 『伝わる!』英語発音 (2023年5月30日). 2024年6月8日閲覧。
曖昧母音
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/06 14:19 UTC 版)
曖昧母音(シュワー)の/ə/は「脱落性のe」(e caduque)や「無音のe」(e mute)とも呼ばれ、音声として発音される場合はやや円唇の中舌中央母音 (Mid-central vowel) である。この母音は音声的には[œ]で/œ/と同一であると見做す研究者が多い。 Fagyal, Kibbee & Jenkins (2006)はより明確に、狭母音および半母音の前 netteté /nɛ.tə.te/ → [nɛtøte](「明瞭」) atelier /a.tə.lje/ → [atølje](「アトリエ」)、 および句末の強勢のある位置―― dis-le ! /di lə/ → [diˈlø](「それを言え!」) では[ø]となり、他の位置では[œ]となると述べている。しかしながら、これは特別な音韻的挙動を示すので、独立した音素として考えられている。 フランス語の曖昧母音の主な特徴はその「不安定さ」にある。この母音は条件によっては発音されないことがあるのである。 語中の音節で単独の子音に続く場合は通常脱落する。rappeler /ʁa.pə.le/ → [ʁaːple](「思い出す」) 語末では最も高い頻度で無音である。table /tabl(ə)/ → [ˈtaːbl](「テーブル」) 語末の曖昧母音は、2つ以上の子音の後、子音から始まる語の前に位置する場合は任意で発音される場合がある。une porte fermée /yn(ə) pɔʁt(ə) fɛʁ.me/ → [ynpɔʁt(œ)fɛʁme](「閉じた扉」) ただし、-er型の動詞の未来形および条件法では、2つの子音の後であっても曖昧母音は任意で脱落する場合がある。tu garderais /ty ɡaʁ.də.ʁɛ] → [tyɡaʁd(œ)ʁɛ](「君は守るだろう」) nous brusquerons [les choses] /nu bʁys.kə.ʁɔ̃/ → [nubʁysk(œ)ʁɔ̃](「我々は[物事]を急ぐだろう」) 他方、語中であっても、発音される子音の後に続いて次の音節の頭子音との間に複合子音を形成できない場合には発音される。gredin /ɡʁə.dɛ̃/ → [ɡʁœdɛ̃](「ごろつき」) sept petits /sɛt pəti/ → [ˈsɛtpœti](「7人の小人」) フランス詩法(フランス語版)では、語末の曖昧母音は他の母音の前と、詩行の末尾では必ず省略される。子音で始まる語の前では発音される。 例えばune femme grande fut ici [yn(ə) fam(ə) ɡʁɑ̃d(ə) fyt‿isi](「背の高い女がここにいた」)は各語末の/ə/が全て発音され[ynœfamœɡʁɑ̃dœfytisi]となる(この例では後に半母音や高母音が続くものがないので全て[œ]となる)。 通常は曖昧母音は閉音節では中舌母音([œ])としては発音されない。屈折・派生による変形においては、そのような文脈で曖昧母音は通常、前舌母音/ɛ/と交代する。 harceler /aʁ.sə.le/ → [aʁsœle](「しつこく攻撃する」) [il] harcèle /aʁ.sɛl/ → [aʁsɛl](「[彼は]しつこく攻撃する」) 3つの音の交代もいくつかの場合で観察される。 appeler /a.pə.le/ → [ap(œ)le](「呼ぶ」) j'appelle /ʒ‿a.pɛl/ → [ʒapɛl](「私は呼ぶ」) appellation /a.pe.la.sjɔ̃/ → [apelasjɔ̃](「呼び名」) 上述のような振舞を見せない正書法上の
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