日本の民間企業における概説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/06 09:24 UTC 版)
「試用期間」の記事における「日本の民間企業における概説」の解説
日本の労働法上は、通常の雇用契約に基づく従業員と異なる制度が設けられているわけではない。したがって、労働基準法、最低賃金法等の労働諸法令や、労働保険や社会保険の手続きは試用期間の初日から一般の労働者と同様に適用される。ただし以下の規定については試用期間中の特例がある。 試用期間中は、労働基準法第20条に定める解雇予告の規定は適用されない。ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く(労働基準法第20条)。つまり、試用期間中であっても、試用開始から14日を過ぎて解雇を行う場合は、通常の解雇と同様の手続きを踏まなければならない。 平均賃金の算定期間中に試用期間がある場合は、その日数及びその期間中の賃金は、算定の期間及び賃金の総額から控除する(労働基準法第12条3項)。なお試用期間中に平均賃金を算定しなければならない場合には、試用期間中の日数と賃金を用いて算定する(労働基準法施行規則第3条)。 使用者が都道府県労働局長の許可を受けたときは、試用期間中の者における最低賃金は、所定の最低賃金額から当該最低賃金額に労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額をもって適用する(最低賃金法第7条)。平成20年7月の改正法施行により、それまでの「適用除外」から「減額特例」へと変更された。具体的には、以下のような要件を満たし試用期間中に減額対象労働者の賃金を最低賃金額未満とすることに合理性がある場合に、採用から6か月間、最低賃金額の20%まで減額を認めることとされている。単なる経営不振を理由としての許可は認められない。実務上は試用期間の減額特例許可を得られるのは極めてまれなケースに限られる。減額特例対象となる試用期間が、当該期間中または当該期間の後に本採用とするか否かの判断を行うためのものとして、労働協約、就業規則又は労働契約で定められているものであること 申請のあった業種または職種の本採用労働者の賃金水準が最低賃金額と同程度であること 申請のあった業種または職種の本採用労働者に比較して、試用期間中の労働者の賃金を著しく低額に定める慣行が存在すること 試用期間の長さや内容等は、労働条件の絶対的明示事項(労働基準法施行規則第5条1項1号でいう「労働契約の期間に関する事項」に該当する)であるため、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して試用期間に関する事項を書面で明示しなければならない(労働基準法第15条1項)。また就業規則の記載事項(通常、試用期間は全従業員に対して一律に定めることとなるので、労働基準法第89条でいう「その他その事業場の全労働者に適用される定めに関する事項」に該当する)でもあるので、使用者は就業規則に試用期間に関する事項を記載しなければならない。平成30年1月以降は、労働者の募集や、公共職業安定所での求人申し込みの際においても、試用期間の有無と、試用期間がある場合にはその期間の長さ、期間中の労働条件を明示しなければならないようになった(職業安定法第5条の3、職業安定法施行規則第4条の2)。 労働契約締結の最終的な意思の確定を目的としているのではなく(そもそも試用期間であっても労働契約自体はすでに有効に成立し履行を開始している)、労働者の配属先を決定する前の新入社員研修を行う期間として設けられることが一般的である。その期間の長さは法令上の定めがないので各企業で任意に定めてよく、正当な理由があれば当初の試用期間を延長しても差し支えないが、あまりにも長期にわたる試用期間は公序良俗に反し無効とされることから、一般的には3か月〜6か月、長くても1年程度とされることが多い。短期の試用期間を設ける企業は社会人としての適性を、長期の試用期間を設ける企業は職務遂行能力を見極める傾向が強い。
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