日本における分析哲学的な言語の哲学の形成と現在
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「言語哲学」の記事における「日本における分析哲学的な言語の哲学の形成と現在」の解説
日本では、大森荘蔵が留学から帰国後、ウィトゲンシュタインの過渡期の講義録的書籍といえる通称『青色本 (Blue Book)』を東京大学教養学部でのゼミナールに使用したことで分析哲学が実質的に移入された。大森自身は分析哲学ともやや異なる独自の哲学を展開していったが、その膝下からは、弟弟子にあたる黒崎宏、弟子からは石黒ひで、奥雅博、丹治信春、飯田隆、野家啓一、野矢茂樹などを生んだ。 黒崎宏主著:『ウィトゲンシュタインの生涯と哲学』勁草書房、『ウィトゲンシュタイン小事典』大修館書店、『科学の誘惑に抗して』勁草書房、『ウィトゲンシュタインから道元へ--私説『正法眼蔵』』哲学書房、他多数 ウィトゲンシュタインの紹介およびその科学哲学・心の哲学への意義について主に論じてきた。次第に後期ウィトゲンシュタイン的立場からの仏教解釈を深めている。 石黒ひで主著:『ライプニッツの哲学--論理と言語を中心に』岩波書店 奥雅博主著:『ウィトゲンシュタインの夢』勁草書房 中期ウィトゲンシュタインを論じる。 丹治信治主著:『言語と認識のダイナミズム』勁草書房 後期ウィトゲンシュタインとクワインの比較及び言語の推移律の不成立を論じる。 飯田隆主著:『言語哲学大全』全4巻 勁草書房 フレーゲからクリプキまで分析哲学史を詳細に論じる。 野家啓一主著:『言語行為の現象学』『無根拠からの出発』勁草書房 分析哲学と現象学に架橋を試みる。 野矢茂樹主著:『心と他者』勁草書房、『哲学航海日誌』春秋社、『『論理哲学論考』を読む』哲学書房、他多数 他我問題を一人称特権の視点から読み解く、後期ウィトゲンシュタインの規則論とアスペクト論を読み重ねる、『論考』の高い整合性と大胆な読解を提示する。 ほかにも、末木剛博、黒田亘、野本和幸などがいる。 また神崎繁のように、分析哲学の手法を西洋古典学に導入したり、清水哲郎のように聖書やオッカムを分析哲学的に読解したり (『パウロの言語哲学』: パウロは、イエス・キリストが神を信じた信仰を救済根拠とするのであり、信徒たちの神もしくはキリストを信じる信仰は語られていないとする。『オッカムの言語哲学』勁草書房)、門脇俊介のようにフッサール、ハイデッガーを専門としつつ分析哲学的知見をとりこんだり、と、新鮮な越境的試みもなされつつある。 さらには、純粋哲学の枠を超えて、法哲学、社会学、宗教哲学、文学 (文芸) などの諸分野にも遅ればせながら応用が始まっている。 日本では分析哲学は、渡邊二郎ら、特にドイツ哲学研究者及びマルクス主義者からの忌避もあって長らく不遇にあった。しかし、大森「学派」の開花とともに、三浦謙、斉藤浩文、関口浩喜、松坂陽一、大辻正晴、中川大、金杉武司らが業績を生んでいる。
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