指揮・射撃統制装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 10:12 UTC 版)
指揮・射撃管制装置に関しては、走行中も主砲の照準を目標に指向し続ける自動追尾機能があり、タッチパネル操作でも主砲の発砲が可能である。無線通信、レーザーセンサー、赤外線、ミリ波レーダーなどのすべてのセンサーが完璧に機能する条件下では、小隊を組んだ10式戦車同士の情報のやり取りで、8標的まで同時捕捉し、これに対する同時協調射撃が可能となる。小隊長は、10式に装備された液晶ディスプレイをタッチパネル操作することで、各車に索敵エリアを指示したり、「自動割り振り」表示を押すことで各車に最適な標的を自動的に割り振り、同士討ちや重複射撃(オーバーキル)を避けながら効率よく標的を射撃することが可能になっている。 10式には自動索敵機能があり、センサーが目標を探知すると目標の形状などから目標の種類(戦車、装甲車両、非装甲車両、航空機、固定目標、人など)を自動的に識別する。FCSは探知・識別した目標の脅威度の判定を自動的に行い、ディスプレイに目標を色分けして強調表示させる。これらの情報は、小隊内各車の状況(燃料、弾薬、故障状況など)とともに小隊内でリアルタイムに共有することができる。脅威度が高い目標が出現した場合は、90式戦車と同様に車長が砲手をオーバーライドできるだけではなく、小隊長が他の小隊車のFCSを強制的にオーバーライドして照準させることができる。照準する際には、データベースから目標の弱点部位を自動的に精密照準する。射撃後、FCSは着弾した場所を精密に計測し、効果判定を行う。FCSが目標の撃破は不確実と判断したならば、FCSは乗員に次弾射撃をリコメンドする。 10式の試験項目には、直進およびスラロームの走行状態を模擬した加振を新戦車模擬砲塔部に与え、射撃管制誤差に関するデータを取得する性能確認試験の内容がある。平成24年度富士総合火力演習で、大きく左右に蛇行しながら正確な行進間射撃を行う「スラローム射撃」および急速後退しながら正確な射撃を行う「後退行進射撃」を実演した。90式戦車など、これまでの第三世代型戦車でも走行中に射撃を行う行進射において目標に命中させることは可能であったが、それは等速での前進中など比較的単純な走行間に限られ、スラローム走行のような急激に進路を変える走行においては十分な精密射撃を行うことはできなかった。また、ニコニコ超会議2内で行われた「10式戦車開発者によるトークショー」では、演習で披露された静止目標に対するスラローム射撃よりも難易度の高い、動目標に対するスラローム射撃でも百発百中の命中精度を有していることが語られている。 車長用潜望鏡後方の高い位置に設置された、車長用視察照準装置の赤外線カメラ部は全周旋回可能、C4Iによる情報の共有などもあり、味方と連携して索敵、攻撃を行うハンターキラー能力は90式と比べて向上しているとされる。 2008年2月の試作車両の報道公開に際し、砲塔上面から砲塔内部の視察が行われたほか、車長席と砲手席のモニターおよび操作パネル周りの写真も公開された。写真には砲手席に直接照準眼鏡と砲手用潜望鏡が写っているが、この写真が報道公開された車両のものかは明らかでない。
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