宇宙際タイヒミュラー理論を巡る経緯
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「望月新一」の記事における「宇宙際タイヒミュラー理論を巡る経緯」の解説
「宇宙際タイヒミュラー理論」も参照 2014年12月の宇宙際タイヒミュラー理論の進歩状況の報告で、望月本人はエクセター大学の数学者 Mohamed Saidi や京都大学数理解析研究所の山下剛、星裕一郎との議論を通じて、「宇宙際タイヒミュラー理論の本筋や本質的な正否に関わるような問題は一件も確認されていない」、また、「宇宙際タイヒミュラー理論の実質的な数学的側面についての検証は事実上完了している」という見解を示した。ただし、「理論の新奇性や重要性に配慮して、念のため理論はまだ検証中であるという看板を下ろす前にもう少し時間をおいても良い」とも述べている。宇宙際タイヒミュラー理論を理解するために求められる絶対遠アーベル幾何やエタール・テータ関数の剛性性質、ホッジ・アラケロフ理論の分野に併せて精通している専門家がほとんどおらず、加えて独自の概念も多数定義して利用しているため、今後も検証には時間がかかると思われている。 2015年にノッティンガム大学のイヴァン・フェセンコ (Ivan Fesenko) によって、望月の宇宙際タイヒミュラー理論のサーベイ論文が発表された。 2015年3月の9日から20日にかけて、RIMS共同研究 「宇宙際タイヒミュラー理論とそのディオファントス的帰結」 と題して山下剛、星裕一郎を講演者とする研究集会が開催された。 山下剛による、宇宙際タイヒミュラー理論に関するサーベイ論文は、2015年3月開催の数理研「RIMS共同研究」の集会報告集という形で、数理研から「講究録別冊」として刊行される予定である。 2015年10月のネイチャーによると、他の数学者が論文を理解できず、論文の正否について未だに決着をつけることができていないという。 2015年12月にオックスフォード大学で理論の国際研究集会が開催された。参加者のブライアン・コンラッド (Brian Conrad) は「準備論文の理解に大きな進展があったが、本論文の検討にはたどり着けなかった。」と感想を述べている。 2016年7月に京都大学で理論の国際研究集会が開催された。主催者のイヴァン・フェセンコは「この研究集会で少なくとも10人が詳細に理論を理解した。私は数論の中で最も重要な未解決問題の少なくとも100は望月の理論とさらなる発展を使用して解決されることを期待している。」と感想を述べている。また、共同研究者の山下剛は(長期的な計画と断った上で)リーマンのゼータ関数との関連性について、次のように述べている:「望月新一氏の計算において、ABC予想の誤差項にリーマンのゼータ関数との関連性を示唆する.mw-parser-output .frac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .frac .num,.mw-parser-output .frac .den{font-size:80%;line-height:0;vertical-align:super}.mw-parser-output .frac .den{vertical-align:sub}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}1⁄2が現れる。 一方、同氏の宇宙際タイヒミュラー理論においてテータ関数が中心的役割を果たすのであるが、テータ関数はMellin変換によってリーマンのゼータ関数と関係する。さらに、宇宙際タイヒミュラー理論において宇宙際フーリエ変換の現象が起きている。これらのことから、長期的な計画であるが"宇宙際Mellin変換" の理論ができればリーマンのゼータ関数と関係させることができるのではないかと期待して共同研究を進めている」。 2019年4月25日には、望月新一の友人で東京工業大学理学院教授の加藤文元により執筆された、一般向けの書である『宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃』がKADOKAWAから発売された。 2020年2月5日、望月の証明が『PRIMS』の査読を通過したことが、同年4月に京都大学数理解析研究所(RIMS)の柏原正樹、玉川安騎男より発表された。会見で配布された「論文採択のお知らせ」によると、論文は著者の望月新一がPRIMS編集長であるため、柏原正樹および玉川安騎男を共同編集委員長として、望月新一を完全に除外した特別編集委員会を構成して採否の審査が行なわれた。 2020年11月、ヴォイチェフ・ポロウスキ、南出新、星裕一郎、イヴァン・フェセンコ、望月新一らにより、IUT理論に登場する不等式を数値的に明示的な形(非明示的な「定数」が現れない)に精密化させた帰結により、強いABC予想の証明への適用を拡げる論文がプレプリントで提案された。 2021年3月 京都大学数理解析研究所(RIMS)が編集する論文誌PRIMSは、宇宙際タイヒミュラー理論の論文4本を特別号で掲載した。PRIMS特別編集委員会共同編集委員長で、審査のまとめ役である玉川安騎男は「今回掲載されたものが未来に残る最終確定のものだ」とコメントした。 2021年3月 望月はIUT理論の論理展開の詳細を解説する論文を公開した。 2022年4月 日本放送協会の制作によるドラマ番組NHKスペシャルで「数学者は宇宙をつなげるか?abc予想証明をめぐる数奇な物語」が放送された。同放送では、abc予想は「数式を証明するためには、数学の世界に混ざり合うように存在しているたし算とかけ算を分離する」必要があり、望月は「かけ算は成立するけど、たし算が成立しない数学世界を作ることで、たし算とかけ算を独立して扱う」アイデアで理論を構築したことが解説された。 2022年4月 アメリカ数学会が運営するMath Reviews誌にエクスター大学教授のモハメド・サイディの書評が掲載され、宇宙際タイヒミュラー理論のCor3.12に関連するTheorem 3.11を肯定するレビューが寄稿された。
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