大統領弾劾発議の根拠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 07:52 UTC 版)
「ウォーターゲート事件」の記事における「大統領弾劾発議の根拠」の解説
ニクソン大統領が下院司法委員会で大統領弾劾の発議を受けてから24年後の1998年12月9日に、同じ下院司法委員会にウォーターゲート事件当時の委員会顧問でニクソン弾劾の準備を進めたスタッフであったジェームズ・ハミルトンが証言に立った。この1998年はビル・クリントン大統領が疑惑や秘書との不適切な関係で大統領弾劾の動きに直面し、下院司法委員会で討議していた時であった。 この委員会の証言でジェームズ・ハミルトンは、ニクソンとクリントンの行為には歴然とした違いがあるとして、国家に対する《犯罪と重大な違法行為》を基準としてニクソンの行為を弾劾発議した経過を説明し、1974年の司法委員会では次の5項目をニクソンの越権行為として問題であるとした。 大統領の政治的利益のために、国税当局に命じて敵対者に関する監査と調査を行い、その情報を協力者に提供した。 大統領の政治的利益となるように、FBIとシークレットサービスに盗聴を命じ、その後盗聴の証拠の隠ぺいを命じた。 「鉛管工」と呼ばれる特別調査チームを作り、CIAの機関と選挙資金を利用して様々な違法の秘密活動を行わせた。 民主党本部への侵入に関する捜査を妨害する行為を許可し、隠ぺいとそれに伴うその他の違法行為を容認した。 個人的な利益のために、FBI・犯罪局・ウオーターゲート事件特別検察官を妨害した。 このような行為は《犯罪と重大な違法行為》であり、憲法を破壊する試みに等しく、国家に対する重大で深刻な違法行為であるとハミルトンは述べ、この国家に対する深刻で有害な違法行為という観念は、弾劾に値する違法行為の本質を現し、深刻で有害な違法行為から国家と社会を守るために弾劾されなければならない、としている。 そしてジェームズ・ハミルトンは、それに比べてクリントンの行為は恥ずべき行為だが、国家に対する危険に相当するものではなく、私的及び公的な問題について嘘をついた公務員を全て弾劾するとしたら行政府から多数の人間が去らねばならないと危惧しているとして、ベトナム戦争時のジョンソン大統領や他の大統領たちも完全に正直であったわけでなく、弾劾には一定の基準を設けなければならないと訴えた。 行政府が捜査を行い行政の職員が違法行為と無関係であるという結論を出して国民を惑わしたことと大人の男女が合意の上での性的行為について嘘の声明を出したこととは全く異なる性質のものである、また裁判所は行政府が特権の適用を要求することが不誠実とは一度も示唆していないし、行政が特権の適用に関する論争に負けても、それが弾劾に値する違法行為とはならないと言及した。 クリントン大統領の弾劾については、上記の通り12月9日の下院司法委員会でジェームズ・ハミルトンの証言があったが、10日後の1998年12月19日に賛成がわずかに上回り、偽証罪と司法妨害の2つの理由で弾劾の発議がされた。そして上院の弾劾裁判に付されて賛成50・反対50でクリントン大統領は弾劾を免れた。 アメリカ合衆国上院の弾劾裁判では、可決に必要な票数は三分の二以上であり、この場合は67票の賛成が必要であった。なお1868年3月5日の第17代大統領アンドリュー・ジョンソンの弾劾裁判も、賛成35・反対19で可決に必要な36票に1票足りず、ジョンソン大統領も弾劾を免れている。
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