外交関係の無い国
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 17:10 UTC 版)
2011年時点で、バチカンと外交関係が樹立されていない国は16カ国である。主な国家としては、宗教の存在を否定する共産党の一党独裁国家で社会主義国の中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、ベトナム、ラオスと、イスラム国家のサウジアラビア、オマーン、アフガニスタン、ソマリア、モーリタニア、ブルネイなどがある。ただし同じイスラム国家でも首長国のアラブ首長国連邦や王制のヨルダン、イランなどとは外交関係がある。 中華人民共和国は信教の自由がなく、カトリック教会を政府の管理下に置き続ける上、キリスト教関係者を逮捕、追放するなど弾圧を続けていることを理由に、1949年10月1日の中華人民共和国の建国以来、国交を持っていない。なお宗主国との条約の下で一国二制度の下、本土とは別制度が採られる香港とマカオの両司教区(カトリック香港教区およびカトリックマカオ教区)は、イギリスとポルトガルの植民地時代からローマ教皇庁の直接管轄であり、中華人民共和国政府の影響を受けていない本来のカトリックに属する。 国交はないものの、バチカンと中華人民共和国は「司教の任命権」の問題など多くの困難な問題を抱えながらも、外交関係の再設定を目指して水面下での協議を続けてきた。例えば1979年には、中華民国台北市派遣の外交官レベルを臨時代理大使に格下げし、中華人民共和国との関係改善への意欲を見せていた。2015年9月28日には、教皇フランシスコ自らが中華人民共和国政府との接触を認めており、バチカンの国務長官ピエトロ・パロリンは中華人民共和国との国交樹立の意向を明言している。2018年9月22日、バチカンと中華人民共和国は、長年対立していた司教の任命権を巡る協議について、中華人民共和国はローマ教皇の国内における地位を認める代わりに、バチカンは中華人民共和国が独自に任命した司教を認めるという内容で、暫定的な合意に達したと発表した。これに関して、バチカンと中華民国は、両国の外交関係には何ら影響を与えるものではないとそれぞれコメントしている。なお香港のカトリック香港教区は、1997年の香港返還後もローマ教皇庁の直轄教区である。 2020年2月14日には、ドイツのミュンヘンで王毅外務大臣とポール・リチャード・ギャラガー(英語版)外務局長による初の外相会談が行われた。だが、中華人民共和国が共産主義国として、中国共産党の傘下にない宗教を規制するという問題は、何ら解決されないという現実がある。 また、バチカンからの「教皇使節」(Apostolic delegate)が、1932年に独立した満州国に派遣され、政府の式典などに参列していたが、「教皇使節」は現地のカトリック信徒のために派遣されるもので、外交的な意味を持たない。2022年現在でもベトナムなどのように、共産主義国でバチカンと外交関係を樹立していないにも関わらず、宗主国の関係上カトリック教徒が多いなど歴史的背景から教皇使節が派遣されている国々がある。その証拠に教皇使節の派遣を管轄するのはバチカンにおいて宗教業務を担当する福音宣教省であって、外交を司る総理省ではない。 国際連合には、長らく「恒久的オブザーバー」という形式で代表を派遣していたが、2004年7月に、投票以外の全ての権利を持った代表となった。投票権を行使しないのは、政治的中立を維持するためであり、当時の国連バチカン代表であったチェレスティーノ・ミリオーレ(英語版、イタリア語版)大司教も「投票権を持たないことは、私たち自身の選択です」と語っている。
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