和製漢語と新漢語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/27 14:52 UTC 版)
詳細は「和製漢語」を参照 日本人が漢字の字音を組み合わせて独自に用いてきたいわゆる和製漢語は、自然発生的に生じた比較的古いものと、もっぱら近代以降に西洋の概念を表すため造語した新しいものの2種類に大別できる。 前者は、「悪霊(あくりょう)」のように漢字の字義を組み合わせて発生した語も存在するが、これに類する語はむしろ少数であり、「世話(せわ)」(和語の「忙(せわ)しい」から)、「油断(ゆだん)」(和語の「寛(ゆた)に」から)のようなあて字から生まれたものや、「大切(たいせつ)」(「大(おほ)いに切(せ)まる」から)、「立腹(りっぷく)」(「腹を立てる」から)のように日本語の表現を字音語に転換したものなど、字義との関連が至極不透明な語が多く、熟語の構造として変則的なものが目立つ。 後者は、中国に先駆けて近代化に成功した日本において、日本語の語彙で不足していた西洋における学術用語を翻訳するために新たに創作された語彙のことであり「和製新漢語」「翻訳漢語」などと総称されることもある。もちろん中国においても同様の新漢語(華製新漢語)は19世紀以降活発に生み出されており、和製新漢語と相互に影響を与え合っていたと考えられる。 これらの和製新漢語の造語の方法としては、以下のようなものが挙げられる。 漢籍から関連する語を引用する - (例)“deduction” → 「演繹」(朱熹『中庸章句序』の「更互演繹、作為此書」) 漢籍から得られる概念を抽出する - (例)“economy” → 「経済」(王通『文中子礼楽篇』の「皆有經濟之道、謂經世濟民」など) 華英辞書(中国語版)などで暫定的に漢訳された語(華製新漢語)を借用する - (例)“protection” → 「保護」 漢語式に音写する - (例)“蘭: lympha” → 「淋巴」 漢語式に直訳する - (例)“lead pencil”もしくは“独: Bleistift” → 「鉛筆」 漢語式に意訳する - (例)“beer” → 「麦酒」 それでも適訳のない場合、ゼロから造語する - (例)“蘭: nerve” → 「神経」(「神気の経絡」から) これらに属する語は、漢語の字義や造語規則によく合致しており、日本だけではなく、中国や他の漢字文化圏においても借用されているものが多い。 一方で、これらの語は本来は西洋的な思想を表現する上で使用する言葉であり、その文脈についての深い理解がない限り、これらの語を十分に咀嚼することは難しいという。例えば、和製漢語である「概念」という語は、「概」と「念」という2字の字義を詮索しても、その内容を理解することは難しいと、哲学者・評論家の加賀野井秀一は指摘している。
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